2018.12.21
追記 [3年使っての感想] 2022.3.5
発売日の朝イチに店頭で機種変更し、使い始めてから3週間経ったので、使用感を紹介したいと思い立ってこの記事を書きました。この記事は、1人のユーザーの「個人的な体験と主観」に基づいています。書き手の誤認や「マニュアルに解決策が書いてあった」という可能性もあります。あらかじめご了承ください。しかしながら、直感的に本機を利用してきたうえでの感想であることは間違いありません。
はじめに私の結論を述べると、「ハードウェアとしては10年に1台レベルの素晴らしい名機種(1つ前の〝10年に1台〟はINFOBAR2)」。一方、「ソフトウェアでは細かな改善要望が多々あり」です。総合的には満足度の高い端末です。
私は家族とともに2台の「ニシキゴイ」(赤)を購入しました。もともと、家族共々、auの3Gガラケーのユーザーであり、4Gガラケーへの機種変更は妥当だと自分たちでは考えていました。3Gと4Gで料金プランが異なりますが、結果的には「ほぼ同額」のプランへ移行したので、価格面での違和感は感じていません。
私は2008年6月19日に発売された「W63K」(京セラ製)を約9年使用しました。私としてはINFOBAR xvは待望のストレート型であり、次の10年間使い続ける可能性が高い機種として心待ちにしていたモデルです。発表された時は小躍りしたほどに。というのも10年前に私が使いたかったINFORBAR2は、機種変更を考えた2008年6月に販売終了していたためです。初代INFOBARもタイミングが合わず使うことができず、今回の「xv」で、ようやくINFORBARユーザーになれました。
ちなみに私は業務用としてiPhoneが勤務先から支給されていたので、もちろんiPhoneユーザーであり、iPod touchとiPadも複数あるなどiOS端末は日常的に利用しています。したがって本記事は「From ガラケー To ガラケー」の機種変更ユーザーのレポートであると同時に、iOS端末を普段から使っているユーザーとして「iPhoneとINFOBAR xvの使用感の比較」でもあります。
写真内左:愛用していた「W63K」。塗装が剥げ、本体横の部品類(フタなど)も取れて紛失し、液晶画面もおかしな感じになっていますが、それでも通話・メールなど「携帯電話」としての機能にはまったく問題はありませんでした。写真内右:今回の私のINFOBAR xv。
機種変更は2台分だったので、手続き完了まで2時間かかりました。なお、本体代金の支払いは一括で行いました。
ここからが本題です。INFOBAR xvの外形寸法は「約48×138×14.0mm」(公式サイトより)、重量は「約114g」(同)です。高さはiPhone6とほぼ同じですが幅は2cmほどスリムで、iPhone 5s/SEの横幅よりも1cmほど痩せています。重量はiPhone 5s/SEとほぼ同じですが、厚みはINFOBAR xvの方があります。これが単なる数字以上の意味をもつのは、成人の手のひらにすっぽりと納まる「にぎり感の良さ」にあるといえます。
もともと軽いのですが、重心のバランスがいいのか、本体を指でつまみ上げる時にかかる指で感じる重さの割に、手のひらに移して握り直したときのフェザー感といえば褒めすぎですが、一瞬空気を握った錯覚のあとにくる、適度な重さ感のバランスが抜群によいです。
最近、ガラスとアルミの筐体の冷たいボディに触れる機会が圧倒的に多い私にとって、INFOBAR xvのプラスチック筐体はどことなく懐かしみと親しみを気がする素材です。手に持ったとき、アルミ筐体のように指先の体温を奪われるヒヤッとした感じもありません。プラスチックとはいえ、チープ感もなく、プロダクトデザインの美しさが、プラスチックの光沢と相まって調和しているように思います。ただ、個人的には背面と側面が「一体加工」であったならもっとよかったなあ、と思います。継ぎ目が「フタしている感じ」でもったいないです
フレームレスのタイルキーには、個体ごとに若干のバラツキがあるのか、キーごとにアソビ感があります。キッチリ詰めすぎると、きっと動作がよくなくなるのでしょう。フレームがない分、外側タイルにはグラつきが多少あります。これは手元の2台でキーのアソビ感が異なるので、個体差なのだと思います。ですが、日常使用にはなんの支障もありません。
タイルキーには適度なクリック感があります。「カチカチ」というよりも、ちょっと低めの音程の「コツコツ」といった感じの音です。超高速でキーを連打しても「カチカチカチカチカチカチカチカチ」というノイズ感はありません。とはいえ、文字入力のスピードだけでいえば、「かな入力方式」「2タッチ入力方式」のどちらで入力しても、スマートフォンのフリック入力のスピードにはかないません。
私が以前使っていたW63Kには、本体横に「操作をロック」するための物理スイッチがありました。そのスイッチでスライド式で「画面操作ロック」と「操作の解除」が行えます。個人的にはW63Kで最も優れた機能だと思います。というのも、ポケットから取り出しながら指でこのスイッチをスライドすることで、画面表示もONになり、操作のロックも解除できます。時計を見るにも、次の操作に移るにも、とにかく早い。INFORBAR xvにはこの操作ロックを行う物理的な機構(スイッチ)はありません。「ロックNo.」を入力して「■」キー(十字キーの真ん中の決定ボタン)を押して解除します。とはいえ、これはスマートフォンでならばごく標準的なことなので、慣れてしまえばよいでしょう。
しかしながら「■」キーを押さなくても、「ロックNo.」を押しただけですぐにロックを解除してほしいというのが私の気分です。親指を数字キーから、「■」キーへ移動させる0.5秒くらいの操作がちょっと時間の無駄に感じます。
待ち受け画面はカスタマイズ可能です。そんなことはスマートフォン全盛の今時では当然ですので、何を言うか、という感じかもしれませんが、INFOBAR xvはあくまで〝機能が限定されている携帯電話〟なので、これも評価ポイントになります。
画面を横に4ブロック、縦に5ブロックにわけた20ブロック内にアプリアイコンや時計を配置します。たとえば、大きい時計は縦に3、横に4ブロックを使用します。カメラやメモ帳などは小さいアイコンが用意されているので、1ブロックです。天気予報やカレンダーなど、変則的なサイズのアプリも用意されています。本体内では「ウィジェット」と「アプリ」の2種類がありますが、正直いって、両者の違いはよくわかりません。
よく使うアプリ(を起動させるリンクアイコン)を置いておくことで、十字キーの操作だけでアプリを起動できます。私は「カメラ」「電卓」「カレンダー」「メモ帳」を配置しました。ストップウォッチなどのアプリもありますが、画面表示文字数の都合で「ストップ..」となるなど、見た目はイマイチに感じました。英語表記の方がスッキリして見えるかもしれませんが、やってみたところ「文字入力」のデフォルト設定が英字入力になるので、面倒になって日本語表示に戻しました。
カメラは800万画素とのことで、iPhone6と同等です。でも、撮ってみた感じでは、iPhone6の方が写真としてはキレイなのでは、と感じます。iPhoneのRetinaディスプレイの表示が美麗すぎるだけなのかもしれませんが、やはりレンズ性能の問題ではないかと私は感じています。「ちょっと記録用」程度の利用には問題ないでしょうが、写真撮影に優れたスマートフォンを利用している人には、INFOBAR xvのカメラは物足りないかもと思います。レンズの性能については、パンフレットにも記載がありませんでした。
ロック画面からカメラを即時に起動できるようなショートカット操作はありません。しかも新着通知が来ていると、通知を解除するまでカメラを起動できません。シャッターチャンスを逃さないように気をつけましょう。
それに、写真データを取り出す方法が面倒です。パケット通信量をかけて転送するか、Wifiを使うか、もしくはmicroSDカードをいちいち取り出すか。個人的にはどの方法も面倒なので、まあ、どうしても取り出したい(=パソコンに移したい)写真データがある場合は、Wifi経由で転送するかな、と思います。
Bluetooth接続もあるようですが、私はまだ試していません。Bluetoothで接続して、PCに写真データを転送できるなら、これが一番ラクかな、と思っています。試してみたら加筆します。
充電はマイクロUSBです。本体の下部面に差込口はあります。キャップ等はありません。穴はむき出しです。付属品はありません。Android端末共通のものを使用可能ですが、持っていない場合は購入が必要です。
私が持ち歩いている電子機器でマイクロUSBケーブルで充電するものはこれだけなので、結果的に充電は家でしかしていません。個人的にはUSB type Cが採用されていたら、普段持ち歩いている他の機器と同じケーブルが使えて楽だったのに、と感じます。しかし3週間で2回しか充電していません。1回のフル充電で、100%→10%まで減るのに1週間を要しました。省電力の「エコ設定」は効果的です。
同梱品の卓上ホルダーは、私は使っていません。なぜならクラウドファンディングでいただいたケースもあるし、デスクに余計なものをなるべく置きたくないので。家族は使っています。置き時計にはなりますが、室内に時計の多い家なので、わざわざINFOBAR xvで時間を見てはいないようです。
上写真:公式サイトより
画面について。アイコンなどグラフィック要素の意匠が気になります。基本的には「平面的・単色・抽象化・シンプル」な感じのアイコンが多いです。そうしたなかで、ところどころ「立体的・カラフル・具象的・情報過多」なアイコンが散見されます。統一感がありません。趣味嗜好や考え方が異なる複数のデザイナーがそれぞれのものを混ぜこんできた感じです。
初めから用意されている「壁紙」や「ライブ壁紙」(動画的な壁紙)も個人的にはイマイチです。単色のベタしか妥当と思える選択肢がありません。
操作性について。細かいところが気になります。先述したロック解除時の操作性(数字キーの後に「■」ボタンを押すめんどくささ)は1日に何回やるかわかりません。時間の無駄感があります。ここはユーザー体験的にも改善の余地があるのでは、と感じます。
携帯電話を目覚まし時計として使う人も多いと思いますが、「アラーム時刻設定」時の操作で、画面上に「▲」があるのに「上ボタン」を押すと下(時刻としては後ろ」)へ行き、「▼」を画面上で視認しているのに「下」を押すと上(時刻としては前)へ行く。Why? これが「タップ操作」ならわかります。ダイアルで下へスライドさせると画面上はダイアルが上へ回転していく。フィーリング的にも一致します。ですが、ボタン操作でその設定になっていると、「トイレットペーパーをひっぱったら、紙がロール側へ巻き取られていった」みたいなチグハグな操作感を受けます。
「+メッセージ」の操作性も気になります。過去の送受信メッセージを表示させながら、新規メッセージを入力できません。白紙の入力画面です。スマートフォンのチャットツールを利用した経験者には「えーっと、いま自分は何を打とうとしたんだっけ?」となるのではないでしょうか。入力途中に来た新着もわかりませんので、会話が錯綜する可能性もあります。
新着メッセージの通知も、「通知」で本文が画面上にヒョコッと出てくるような気の利いた部分はありません。しかしEメールにはロック画面に新着メールをポップアップで表示する「通知ポップアップ」機能が用意されています(ただしこの機能を有効にするには、ユーザーが任意で設定する必要あり)。なぜ「+メッセージ」もポップアップ通知が用意されていないのか理解に苦しみます。なお、「LINE」は使っていません。
私はこの「十分すぎる多機能端末」のうち、「電話帳」「通話」「+メッセージ」「時計」を日常的に使用しています。利用頻度での次点は「カメラ」です。機能的には十分なのですが、それぞれの機能へアクセスする操作、とくにソフトウェア上の部分は改善の余地があるように思います。慣れてしまえばそれまでかもしれませんが、「時間を無駄にする感覚に慣れる」のは好ましくないと思います。OSのアップデートなどで改善(選択肢が増える)されるとうれしいなあと感じています。
最後に「私が個人的に最も高く評価したポイント」を1つ述べておきます。それはロゴ類が本体の表面に一切ない点です。以前の機種には「au」だの「iida」だのといったロゴがありました。他社製品でも製品の表面、つまりユーザーの顔に向き合い、その視界に入る場所にロゴが配置されています。一方で、表面にロゴがない製品といえばiPhoneでしょう。私はiPhoneのべゼルが黒いモデルにおける「黒い一枚の板」という見た目を非常に愛好していますので、INFOBAR xvも表面にロゴがなくて気持ちが良いです。
使って3週間の使用感を述べると「電話機(通信端末)」としては、ストレート型携帯電話の〈最終完成形〉ではないでしょうか。プロダクトへの美意識の粋であり、10年使い続けたい製品です。自分で書いておいてなんですが、10年ってすごいと思いませんか。『LIFE SHIFT』で人生100年時代と言われていますが、その1割の時間を家族よりも長い時間、手元で一緒に過ごすわけですから。
一方、ソフトウェア的にはところどころ「?」が残る仕上がりのように感じます。今後のアップデートに期待します。
今回、私はクラウドファンディングで「ピンバッジが欲しい」「ケースが欲しい」と思って2種類に申し込みました。自分にとっては発売までの期待感を維持するうえでは効果的でした。卓上ホルダのところで「余計なものをデスクに置きたくない」と書きましたが、すみません、ケースは机に置きっ放しです。二重基準で申し訳ない。小物入れにして持ち運ぶにはいいかもしれませんので、今後使い方は改めるかもしれません。
また、「製造上のミスで」ということで、うちには2個目のケースが届きました。下写真をご覧ください。表面のテカり具合が違いますでしょう。製造工程で「予定していた布地と別のものを貼ってしまったものが混在していた」そうです。写真の上が本来予定していたらしい布地。下は最初に届いた「意図していない布地」のもの。たしかに「下」は目が粗く、触りごこちもザラザラしています。
それはそれとして、Wikipediaに現時点でINFOBAR xvのページがないことに気づきました。Wikipedianの端くれとして、ページの新規作成に取り組もうかと考えています。
早いもので、Infobar xvの発売から3年経ち(4年目に入り)ました。発売から4ヶ月経った2019年3月頃に「試供品」と書かれた専用ソフトケース(TPU製)が届き、それを装着して丸3年になりますが、いまのところ「キーが取れる」といったこともなく、安定して利用できています。
専用ソフトケースは、本体の最上部と最下部をわずかに覆う形になっています。「*」と「#」のボタンが衣類などに引っかかって取れてしまうことを予防するための構造なのかな、そのためにソフトケースを先回りして配布したいのかな、と推測しています。ピッタリ収まるのでもなく、微妙に緩いケースです。
この3年の間、ソフトウェアの大きな更新も見られず、製品としてはやや見放されているのではないか、というような印象を持ちましたが、そのぐらいの距離感がむしろちょうどよいのかもしれません。期待もしないし、適度に放置されて日常使いを続ける。当たり前に手元にあり続ける存在です。物理的破損もいまのところありません。キーの印字の中に、わずかながら擦れてきたようなところが見られますが、劣化らしい劣化はその程度です。
使っていて、不便らしい不便もありません。というのも、そもそも私はSMSと通話にしか使わないからでしょう。とはいえ通話の機会も最近ではめっきり減りました。
この3年間でInfobarシリーズに起きた、私として驚きの出来事は、au design projectの歴代の名品がガチャガチャの景品となったことでした。運良くinfobar 2のストラップを手に入れられた家族から、譲っていただくことができました。以来、Infobar 2とInforbar xvの共演が私の手元では続いています。
来年、Infobarは20周年を迎えますが、20周年記念モデルは登場するのでしょうか。計画はきっとあるでしょうが、ユーザーとしては望み薄かと想像しています。4Gが停波されるときまで、きっとこのストレート端末自体は新しくならないに違いない、とも思っています。来るべき次のInfobarは、再びスマートフォン化していくかな、とも。そうだとしても、カスタマイズされすぎたAndroidはかえって使いにくくなると私は思っているので、変なチューニングはせず、シンプルなLook & Feelを追求してほしい、と。(過去のスマホ版infobarも美しい製品であって、これらを批判しているのではありませんが⋯⋯)
ユーザーの視点で外野から眺めていると、au design projectはすでに役目を終えてしまったのではないか、という気さえします。これほどiPhoneとAndroidが世界を支配するとは、15年前にはとても想像できませんでした。もしも、au design projectが大々的に再起動(リブート)されるならば、思いもよらないような機能美に満ちたプロダクト、ユーザーにとても予想できない新基軸の提案がなされるプロダクトの登場に期待したいと思っています。モノづくりはまだまだ健在だ。そう信じたいものです。
〈おわり〉