2019.6.17
[update] 2020.8.1
[update] 2021.1.21
© Nishiyama Nobuyuki
2019年5月、名作ボードゲーム『カルカソンヌ(Carcassonne)』にインスパイアされて開発されたアプリゲーム『パズル&モナーク(Puzzle & Monarch)』をプレイした。第一印象は「非常によくできた作品」だと感じた。筆者は「時間無制限モード」を引き続きプレイしたいと思ったため、数百円の課金をすぐに行い、このモードの攻略法を研究してみることにした。
その後、Twitterに公開された知人のプレイ結果を見ていると、「長い1本道」「大きな森」「全パネルが得点源になっている」などの諸条件を満たしていると、得点が跳ね上がることがわかった。とはいえ繰り返しプレイしてみても、高得点を獲得することは甚だ難しく、筆者には28万点あたりが限界であった。しかしハイランカーのプレイヤーには40万点以上の高得点を叩き出している方々が多いようで、果たしてどのようなテクニックを駆使しているのか、とても想像がつかなかった。(※その後に下記の「パネルカウンターチェックツールを用いて達成した41万1945点が自己ベスト)
この手のパズルゲームでは、動物的直感と類い稀なセンス、没頭できる時間的余裕と集中力によってハイスコアをマークできるプレイヤーもいるが、筆者はそのタイプではない。そこでメソッドを導き出すため地道に研究することにした。その手始めとして、どのような種類のパネルがあり、それぞれ何枚ずつ登場するのかという基本の確認からスタートした。その結果が下記である。(6月17日現在、各パネルの登場枚数はデータ収集中のため確定していない。後日補記する ←集計完了済み)
このゲームにおいて「90秒モード」と「無制限モード」は、たんなる時間制限の有無ではない。ハイスコアをマークするには、モードごとに別々のプレイングセンスと戦術が求められる。この2つのモードは、同じルールにもかかわらず、絶妙な時間制限によってまったく別のゲームとして楽しめる、すばらしいゲームデザインだ。
90秒モードは「テトリス」や「ぷよぷよ」などの「落ち物パズルゲーム」に近い。その状況における最適解を高速反射的なスピードで判断しながら選んでいくスポーティなゲームだ。一方、時間無制限モードは「カルカソンヌ」に近く、現在出現しているパネルとこれから出現するであろうパネルをカウントしながらベストな完成形を求める落ち着いたゲームといえる。同じゲームシステムでありながら、時間制限の絶妙な設定によって、二面性のあるゲームデザインになっている点がお見事だ。筆者はどちらのモードも楽しめるが、どちらかといえば、パネル状況をカウントしながら詰めていく時間無制限モードの方がプレイ機会が多い。
なお筆者は180秒モードは未プレイである。
パズル&モナークに登場するパネルは20種類である。筆者が感じている各パネルの内容と特徴を紹介する。なお、パネルの名称や用語は、筆者が仮でつけたものである。パネルの画像はモデル化するために筆者が独自に作成した。
パネル名の「数字」:平地でない要素(森または道)が、隣接するパネルに接している辺の数
例 森1=パネルの1辺が森として隣のパネルに連結する。
パネル名の「A」:パネル内の要素(森、道)が、1辺から反対側の辺(180度の角度で対面する辺)へ連結していることを意味する。
例 森2A:パネルに2辺の森への連結があり、かつその連結は反対側(180度の角度で対面)している。
道A:直線の道のこと。
パネル名の「B」:パネル内の要素(森、道)が、1辺から対角側の辺(90度の角度で対面する辺)へ連結していることを意味する。
例 森2B:パネルに2辺の森への連結があり、かつその連結は対角側(90度の角度で対面)へ連結している。
道B:直角の道のこと
パネル名の「連」:パネル内でその森が連結していることを意味する。道は必ず連続するので「連」は付けない。
例 森2A連:2つの辺の森(森2)で連結しているパネルのこと
パネル名の小文字の「a」と「b」:直角で曲がる道(道B)には、森1が付属する複合パターンが2種類ある。道の角度が6時15分を指しているときに森1が9時(左)側に来る「a」パターンと、12時側に来る「b」パターンの2種である。
森1 5枚
パネルの1辺が森、残りの3辺が平地となっているパネル。森の始点とすることもできるが、どちらかというと、「森を閉じる終端になる」という点の方が機能としては重要といえる。
森2A 3枚
パネルの両側が森になっているパネル。森1と同じく「森を閉じる」機能として有効。
森2A連 3枚
パネルの両側が連結した森になっているパネル。森を拡大したり、複数の離れた森を接続させて大型化するなど「森の拡張」で有効。このパネルで拡張しても、「閉じる」のが容易なのでゲーム終盤で登場すると嬉しい。
森2B 2枚
パネルの対角の2辺が閉じた森になっているパネル。森を閉じる機能として使えるが、大きい森を作ろうとして入り組んでくると、対角側が思うようにうまくハマらなかったりして使いにくい面もある。
森2B連 5枚
対角の2辺が連結している森のパネル。森を拡大する上で、最も効果的なパネル。斜めの方向に森を拡張できるので、マップの空白に向かって余裕を持って広げていける。広げる方向も状況に合わせて選べるので使いやすい。森を閉じる方向へ向かっているときでも、配置の向きによっては変に広がらないので扱いやすい。
森3 4枚
3辺が森になっているパネル。森を寄せながら連結させてしまったときに、3辺を連結させるのに役立つ。ゲーム序盤では1辺の森から連結させて次の2辺で拡大させていくという拡大策をとるときに極めて有効。
森4 1枚
4辺が森になっているパネル。ゲーム内で必ず1枚は登場するので、うっかり4辺全部を森で囲んでしまった空間ができたときには森4を待っておくとよい。ゲーム後半で登場すると、森が広がってしまうため、急いで閉じていく必要がある。ゲームのラスト数枚でこのパネルが登場しても良いように備えておくと良いが、実際はなかなか難しい。
道A 8枚
変哲のない直線の道。すべての道はローマへ通ず。両側が平地なので教会を囲むときなどにも使いやすい。
道B 9枚
90度角の曲がり道。パネルが密集するエリアから逃がすよう外向きに道を伸ばす場合や、逆に1つの地域にパネルを連結させていきたい場合には内向きに配置するなど、いろいろな手に使える。
道の始端または終端として機能するものが3種、道や森と連結しないものが1種。
建物1(砦) 2枚
砦というのは筆者が独自につけた名称。1辺が道であることは使いやすいのだが、逆に3辺の平地ゆえに、ぴったりハマる場所と、そうでない場所が明確に分かれるパネル。1回のプレイで複数枚が登場するので、あらかじめ砦を入れると想定する場所を開けながらパネルを配置していくと良い。
建物3(街) 4枚
3辺が道で繋がる建物パネル。街は筆者が独自につけた名称。3辺の道をどう置くかで悩むことは少ないと思うが、道を寄せていったら街しか入らなくなってしまった場所が出現した場合に街がピタッと入ると嬉しい。なお、道2辺と接続する建物パネルは存在しない。
建物4(城) 1枚
4辺が道で繋がる建物パネル。城は筆者が独自につけた名称。4方向から道がきている場面というのは早々ないし、ここで道が増えてしまうと道が余ってしまったりするので、なるべく街の側において処理したい。最後の1枚が城だときついが、序盤だとこれを始点に長い道を作ることになるので、それもやや面倒になる。ゲーム内で必ず1枚登場するので、いつ城が出現してもハマる場所を用意しておくと良い。
建物0(教会) 4枚
4辺が平地の建物。ゲームで必ず数枚登場するので、教会を効率よく完成できるように想定しながら空きスペースを用意しておくと良い。教会の横に教会を配置することはよくみかける光景。森を広げている場合に、大きすぎる森林にならないよう、森のエリアに平地を1マスだけ作っておいて、そこに教会を入れるなどが有効。
道A森1 3枚
森の前を横切る一本道のパネル。森の拡大をしているときには、この直線が邪魔になりやすいように感じる。道を伸ばすパネルとして使う方が無難だが、道を伸ばしつつ、かつ森を閉じる(森1としても使う)という手を取れると高度なことができたような実感を持てる。
道B森1a 3枚
図の通りの位置関係で森と直角道が含まれているパネル。道をつなげていく場面でも、森1として大きくなった森を適宜閉じていく上でも、わりと使いやすい。
道B森1b 3枚
非常に紛らわしいのだが、「道B森1a」と比べて、森の位置(あるいは森に対して道の向き)が違うパネル。使い方は道B森1aとほぼ同じ。
道B森2B連 5枚
貴重な「森2B連」を積極的に使いたい序盤で、森2B連の代わりになるパネル。ただし道がその後の邪魔にならない角度で配置していく必要がある。森の拡大に使いにくい状況の場合は道の拡張で使いたい。その際は曲がりくねった1本道にしておき、森が干渉してこないようにしておくと後がラクといえる。ただし、この森もうまく使いながら道を組み立てられるとなお良い。
道森3 3枚
道が森の中へ入って行き、終端として機能するパネル。3辺が森なので森3と同様に使うこともできるが、森の形が込み入っているときに嵌め込むとと後で詰んでしまいやすいので、このパネルの道のある方には森は伸ばさずにおく方が無難。
建物3森1(森1のある街) 3枚
道3の「街」と同様の使い方ができるパネル。ゲームの序盤で登場した場合は、この街の背後にある1辺の森を大きな森の始点として使うと良いだろう。平地に面している辺が1つもないので、ゲーム後半では配置する場所に工夫は必要。とはいえ、比較的使いやすいパネル。
実は筆者なりに攻略法の考えをまとめつつあった頃、たまたまWeb検索した際にこちらのページ(「パズル&モナーク」 90秒10万点攻略メモ|Lazy Life,Easy Exit)に気づきました。筆者のまとめようと思っていた攻略法とほぼ同じ結論に先行して達していらっしゃいました。完成度の高い解説であり、異論はありません。
筆者として付け加えるべき要素として(時間無制限モードを想定して)、森と道の複合パネルの両方を得点源としていくために、じっくり考える時間と、すべてのパネルを使い切れる要素がある「無制限モード」では、「道と森を別方向へ進ませるのは『安全策』として有効」でありつつも、「できるだけ森と道を並行して進める」「大きな森を中央にし、囲むように道を配置していく(交差するとどちらかが途切れてしまうので)」を提唱します。
道が森と付かず離れずで進んでいくと、後半になるにしたがって1手のミスで得点できなくなるピーキーな戦術(かつ、パネルの出現順という運の要素によっても左右される)ですが、40万点台へ挑戦するにはこれしかないと考えています。
(準備中)
森は最大で「32」までいけると筆者は推測している。しかし筆者自身は「31」までしか実証できていない。下記は「森31」のサンプル(※道づくりと教会配置には失敗している)。その後、「森32」を達成できました。
(準備中)
道は最長「34」まで連続できる。下記は「道34」のサンプル(※森づくりと教会配置には失敗している)
筆者自身は41万点台までしかマークできていないが、ランキング1位〜4位は43万点台、5〜11位は42万点台ランカーが占めている。40万点へ到達するには、次の得点構成になる必要があると考える。
森32:約15万点、道34:16.5万点、教会:3万点、全パネル得点ボーナス:6万点。合計40.5万点。実際にはこれに加えて細かい道や森が端数的に生じるので、さらに1〜2万点が上乗せされ、最大43万点は理論値的に推測できる。実際、最高点ランカーは43,5162点のKOKOBUEBUE氏であり、上位4名は43万点台を達成している*。(※2020.8.4現在)
筆者はその後、2021年1月9日に以下の得点構成で41万1945点をマークすることができた。森2, 2, 2, 2, 30:約14万1073点、道2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 34:16万86644点、教会:3万3551点、全パネル得点ボーナス:6万8657点。合計411,945万点。上の予測と数字で若干の食い違いはあるが、概ね予想にちかい着地ができた。
パズモナ製作者の西山信行氏のツイートによると、KOKOBUEBUE氏が435,162点の偉業を成し遂げたのは2019年8月26日とのこと。パズモナのプレイヤーがおよそ倍に増えた約1年後の今も、この記録は破られていない。KOKOBUEBUE氏へ。この記事をご覧になられましたら、ぜひその不動1位の栄冠にある貴殿の"王国"(君主領)のスクリーンショットをご提供いただけませんでしょうか。貴殿の王国版図は世界遺産級の存在です。(連絡先はこのページの末尾にあります)
最終的に森32を目指す大きな森を作るには、道と森の複合パネルの活用が不可欠だ。上のパネル一覧でいうところの「道B森2B連」がそのキー要素となると筆者は考えている。以下のような繋げ方が理想である。「道B森2B連」は5枚出現するので、それらを大きな森に組み込めるよう道と森の伸ばし方に気を付ける。(左:モデル図 右:作例)
パズモナは、すでに置かれたパネルの前後左右が自動的に「パネル設置候補地」のような形でアクティブになる。とはいえ〝青の枠線〟で示されたこの候補地に置けるパネルを急いで置く必要もない。この特性を利用することで、パネル設置の選択肢を広げることが容易になる。時間無制限モードでは、どのタイプのパネルが何枚くるのかが確定しているので、「すぐに置かなくて良いパネル」は後回しにして、「設置候補地」をまずは増やしていくことが有利に進めるコツである。
「3辺が森」というパネルはが4枚、が3枚である。合計7枚までは「隣接させながら伸ばすことを想定しながら進めると、森を閉じるパネルを無駄にせず準備ができる。もちろんクネクネ曲がる森が完成しても問題ない。下記はサンプル。
長い道を完成させるためには、メイン得点に絡まない「道の終端パネル」は固めて設置し、「道2」を複数稼ぐと良い。結果的に城下町が出来上がる。下記はサンプル。(道32、森32)
どのパネルが現在何枚使われたか(=どのパネルがあと何枚残っているか)を確認できるツールを用意しました。ツールといってもマニュアル操作でチェックしていく単純なものですみません。一手ごとにチェックボックスをクリックしていく手間はありますが、終盤の残パネル確認に効果あると思いますのでご活用ください。
ゲームの初期パネルは必ずなので、下記のチェックボックスから最初の1枚は除いています。つまり、初期パネルを含むとは合計4枚登場します。
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パズモナはすばらしいパズルゲームなだけに、この世界観がもっと広がる遊び方が開発者から提示(アプリのアップデート)があるとさらに面白いのではないかと筆者は感じている。
課金要素として、たとえば「次に出るパネルが表示される機能/モード」の追加はどうだろう。一般的な「落ちものゲーム」では、次に登場するオプジェクトが予告されることが多い。パズモナの90秒モードでも「次に何のパネルが来るか?」がわかると、次のパネルをどう置くかを考えながらプレイできてよいだろう。とはいえ、パズモナは内部エンジンで「次のパネルが確実に置けるかどうか?」をチェックしてから表示していることは間違いない。よってユーザーの手順で「予告した次のパネルが置けず、詰んでしまう」という状況が発生しうる。この点が「ぷよぷよ」や「テトリス」とは異なる点なので、システム的に実装不可能かもしれない。「詰み」によるゲームセットも「アリ」とするかどうかだろう。
上記とは別の方向性の課金要素として、「パネルの追加購入」が可能な「Extended Mode」などいかがだろうか。君主として領土拡大をどんどん推し進めたい。だが71枚のパネルでは領土欲が満たされない。世界の果てまで支配したい⋯⋯そんな野心あふれる君主のために「パネルの追加購入」が可能になれば、喜んで課金するユーザーも多いだろう。ユーザーが「71枚の基本パネルセット」に加え、「各自購入したオリジナルパネルセット」を自由に使えるようにする「無限拡張モード」や、基本71枚+指定の枚数まで購入したパネルを自由に組み合わせて使える「制限付き拡張モード」などはどうだろう。トレーディングカードゲームの「デッキ」のようにして遊び方が大きく広がる気がする。たとえば教会()を10枚入れて「大伽藍デッキ」とか、城()と砦()を10枚ずついれて「大軍事国家デッキ」とか、各種の道をたくさん入れた「すべての道はローマへ通ずデッキ」とか、そういった遊び方もできそうだ。筆者も大好きな「」を大量に入れれば、森をさらに巨大化できるので「シュヴァルツヴァルト国立公園デッキ」などなど、楽しそうではないか。
あるいはさらに、街と街を道でつなぐと、往来を交易商人が移動していくアニメーションが発生するなど、名作シミュレーション「Age of Empires」(右画像は「交易の荷馬車(Trade Cart)」)や「SimCity」のような映像表現があっても楽しいに違いない。自分の国民や証人が活動しているのが見えると、さらに箱庭的でおもしろい。ここまでくるとパズモナの本来のゲームシステムから離れてくるが「人口」とか「税収」とかの機能があると、どんな遊びかたがありえるか想像が膨らむ。
それに、モードがなんであれ、森や町のビジュアルが変化する「春夏秋冬」で4回プレイしてその合計得点を競う「1年モード」など、競技としての幅に想像力は膨らむ。発想の自由さ、手軽に遊べる楽しさ、パズモナは、そうしたパズルゲームの良さがぎゅっと詰まったまぎれもない名作だと筆者は感じている。
〈おわり〉