花札こいこいは〝運ゲー〟である。48枚ある札が手元に来る確率は一律に2.08%である。運が確率的に平等であるならば、幸運の到来に備えられるかどうかは戦術と技巧の差に現れる。ゆえに花札こいこいは運ゲーでありながら、ワザで勝敗が分かれるゲームであるといえる。
本論考では、花札こいこいをより楽しむために、基本戦術として「(1)相手より早く役を作る」「(2)相手に役を作らせない」を提唱する。役を作る上でのアプローチとして「(3)マルチコンボ」と「(4)クイックイグジット」を解説し、競技進行を有利に進めるためのテクニックとして「(5)カウンティング」を紹介する。
Hanafuda Koi-Koi is a "Game of Luck"; the probability of getting 48 cards is 2.08% across the board. If luck is equal in terms of probability, then the difference in preparation for the arrival of good fortune appears in the difference in tactics and skill. Therefore, it can be said that Hanafuda Koi-Koi is a game of luck, but it is a game in which victory depends on your technique.
In this article, I will discuss the basic tactics of Hanafuda Koi-Koi to enjoy the game more, such as (1) Make your Hand(役=Yaku) before your opponent and (2) Block up your opponent make a Hand. (3) Multi-Combo and (4) Quick Exit as approaches to creating a Hand. I will explain (5) Counting, it is a technique for advancing the game.
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〈目次〉概論 / 要約 / 目次 / はじめに / 札の総数と配札 / 札の構成と競技の流れ / 開幕と初手 / 基本戦術 / マルチコンボ / クイックイグジット/ タネ役の戦術/ カウンティング/ おわりに/ 参考文献/ 付録|オンラインでプレイできる花札こいこい / 更新履歴/ 問い合わせ先
筆者は本稿の執筆から遡ること2ヶ月ほど前、唐突に「花札」をプレイできるようになってみたくなった。実物は任天堂の商品を購入し、オンラインの無料ゲームやiOSアプリでルールを確認しながらプレイを練習した。花札(こいこい)は博打性の高い、運に大きく左右されるゲームである。しかし花札こいこいを競技する二者において〝運の良し悪し〟が統計的に平等であるならば、戦術級での戦い方が実際の勝負を左右しうるものであることを筆者は確信している。本稿では、その「戦術級の戦い方」、すなわち「花札(こいこい)の上手い・下手」について述べる。筆者も勉強途中の身ではあるが、花札こいこいに上手くなろうと考えている方の役に立てば幸甚である。
花札の総枚数は48枚である。プレイ開始時の競技者の手札は各8枚、場には8枚が撒かれる。花札こいこいの競技者は、このゲームに関する数字を把握することを筆者はおすすめする。
花札こいこいは、各手札8枚と場の札8枚の合計24枚でスタートする。競技者の手札の初手8枚の組み合わせパターンは次の通り。
総枚数=48
手札数=8
48C8 = 3億7734万8994通り
各札の出現率は2.08%である。この割合は均等である。出現率は均等であるが、札の価値は均等ではない。札の役目別の枚数構成は次の通り。
花札こいこいは、次の手順でゲームが進行する。「場」は、「山札からのめくり」を意味する。各手番は8回なので、山札からめくられる枚数の合計は、8枚 × 2で16枚である。場札の枚数は競技の進行に左右されるので絶えず変動する。
花札こいこいでは、スタート時点での24枚(親の手札8枚、子の手札8枚、場の札8枚)と、山札からめくられる最大16枚の合計40枚が使用される。プレイの途中で役ができて「勝負」となると、競技は40枚を消費する前に終了する場合もある。
競技中にどれほど「狙った役」があるとしても、狙った札が山札の底8枚に入っている場合は、プレイを続行するだけ無駄である。競技中、競技者は山札の順番を知ることはできないので、諦めと見切りを念頭に起きながら競技することになる。競技の1回1回は次の流れで進行する。
1 親→場 親の手札:残7枚、山札:残23枚
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1’ 子→場 子の手札:残7枚、山札:残22枚
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2 親→場 親の手札:残6枚、山札:残21枚
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2’ 子→場 子の手札:残6枚、山札:残20枚
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3 親→場 親の手札:残5枚、山札:残19枚
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3’ 子→場 子の手札:残5枚、山札:残18枚
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4 親→場 親の手札:残4枚、山札:残17枚
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4’ 子→場 子の手札:残4枚、山札:残16枚
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5 親→場 親の手札:残3枚、山札:残15枚
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5’ 子→場 子の手札:残3枚、山札:残14枚
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6 親→場 親の手札:残2枚、山札:残13枚
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6’ 子→場 子の手札:残2枚、山札:残12枚
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7 親→場 親の手札:残1枚、山札:残11枚
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7’ 子→場 子の手札:残1枚、山札:残10枚
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8 親→場 親の手札:残0枚、山札:残9枚
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8’ 子→場 子の手札:残0枚、山札:残8枚
花札こいこいでは初手をどう判断するかが最重要課題である。
初手は自分に8枚、場に8枚ある。合計16枚であるから、総枚数の3分の1(33.3%)が見えていることになる。競技開始時点で見えないのは、対戦相手の手札8枚(16.6%)と、山札24枚(50%)である。
手札に順番は関係ないが、山札に含まれる札は、どのような順番で登場するか重要になる。24枚の山札がどのような順番で並ぶかは次の通り。
24!=6204垓4840京1733兆2394億3936万0000通り
パターンが膨大すぎて、考える意味はあまりない。山札は上位スタック(上から順番の)16枚のみが競技に影響する。最後の8枚はその回には出番がない。
競技者はまず、手札8枚と場札8枚を見る。その16枚は全体の33%である。その33%を見て、その回の進行をイメージ(組み立てる)ことになる。どの札から取ろうか、どの順番で取ろうか、手札に合う札が全然ない、などなど。
競技者が最初に行うべきは、札のカウントである。手札と場札を見て、どの種類(月。moonではなくmonthの方)の札が何枚出ているかを把握する。たとえば、自分の手札に[松のカス]が1枚あり、場にも同様に[松のカス]が1枚あるとする。残るは[松に鶴]と[松に赤短冊]である。それらの「いずれかが相手の手札にある確率25%、山札にもう一方がある確率75%」と「相手の手札に両方ある確率12.5%、どちらも山札にある確率が50%」とイメージする。
すべての札は出現率が2.08%で共通である。月札も各4枚で共通であるから、手札8枚と場札8枚の初期の札配置における月札の分散の期待値は各月1.3枚、つまり1枚出ている月が9種、2枚出ている札が3種である。もちろんきちんとシャッフルされた札でも偶然的に3枚以上が登場したり、1枚もない月があったりする場合もある。手四が生じたり、食っ付きが生じたりした場合、申告して回が流れるルールが一般的だ。
この運ゲーならではの〝ばらつき(ゆらぎ)〟が、花札こいこいのの醍醐味である。ばらつきのなかでの予測、読み合い、フェイントや騙し合い、無謀さや賭けが交差する。
花札こいこいの基本戦術は次の2つである。
どちらか一方に偏るのではなく、攻守のバランスを取りながら、その場その場で最適な手を取るのが基本である。
花札こいこいで使われる札には、「特定の役しか作れない札」と「複数の役で構成要素となっている札」の2種類がある。本稿では後者を〝マルチコンボ〟と呼ぶ。マルチコンボの構成要素となる札、前者はマルチコンボを形成しない(単独の役=シングルコンボのみ)の札の2種類に分かれる。
マルチコンボの組み合わせ例を図解すると下図のようになる。このような役の仕上がりは理論上は実現可能である。花札こいこいでは、8手×最大4枚ずつ=32枚を獲得可能である。ただし競技相手も同じペースで場札を取っていくと、場札が枯渇するので1手番で最大2枚しか確保できなくなり、ペースダウンする。
【図1 花札こいこいの役におけるマルチコンボの組み合わせ】
マルチコンボは、複数の役で構成要素となる札(本稿では〝キーファンクション〟と呼ぶ)を軸にして、複数の役を作ることを意味する。単純にタネ役とカス役ができた状態はマルチコンボとは言わない。
手番が8回までいった場合、競技者が獲得する札の合計は40枚である。合う札がまったくなくて捨て続けることになり、獲得が0枚というケースも理論上はありえる。獲得する札の枚数の期待値は8枚以上24枚以内である。
【図2 花札こいこいにおける獲得札枚数のバランス】
花札こいこいで用意されている主要な〝マルチコンボ〟は次の通り。
上記のマルチコンボがさらに組み合わさるパターンも理論上はありえる。たとえば下記のようなケース。
特定の役を作るのには必要だが、裏を返せばその役しか作ることができない札のことである。花札こいこいでは、36枚(75%)の札がこれに該当する。その36枚のうち、24枚がカス札、3枚が光札、4枚がタネ札、5枚が短冊札である。
[松に鶴][桐に鳳凰*][柳に小野道風*(蛙)]
*鳳凰は、「鳳凰」の二字でこの空想の動物を表現しているという説もあるが、「鳳」が雄、「凰」が雌を称するとする説もある。筆者はこの説を支持したい。鳳凰の外見はまったくのキメラである。「前半身が麟,後半身は鹿,頸(くび)は蛇,尾は魚,背は亀,頷(あご)は燕(つばめ),くちばしは鶏に似る。羽にはクジャクのような五色の紋」があると言われる。(参考文献:『スーパー大辞林』)
雌雄一対が単語になっている空想上の動物としては、他に「麒麟」がある。麒が雄、麟が雌であると言われる。福岡の太宰府天満宮には青銅製の「麒」の像が屋外展示されている。
*小野道風(おの の とうふう、おの の みちかぜ)平安期の著名な書家である。人物として花札に描かれているのは彼一人のみである。しかしこの札には「蛙」も描かれていることから、「柳に蛙」ともいわれる。筆者としてはどっちでもいい。古くは「斧定九郎(おの・さだくろう)」が描かれていた。関連リンク:wikipedia
[藤に赤短冊][菖蒲に赤短冊][萩に赤短冊][柳に赤短冊]
[梅に鶯][藤に子規][杜若*に八つ橋][芒に雁][柳に燕]
*菖蒲(アヤメ)は乾燥した場所に植生する植物であることから、「八つ橋」の札に描かれているのは菖蒲ではなく杜若(カキツバタ)であるともいわれる。菖蒲と杜若は花の形姿が非常に似ており、「いずれ菖蒲か杜若」と〝似ている者〟を表す諺もあるほどだ。筆者は「八つ橋」札は「杜若が描かれている」説を支持したい。
カス役のみ構成するカス札は24枚あり、半札の50%を占める。1つの月の札は4枚であるから、各月は全体の8.33%ずつである。カス札は、なんとなく集めていても、意外と集まりにくい。もしカス役で迅速に〝ひとまずの勝ち〟に到達するには、タネ札や短冊札を無視して、優先的にカス札を集める必要がある。
先述のマルチコンボを構成するキーファンクションとなる札である。マルチコンボを先述に取り入れるには、まずこれらの札を把握することが不可欠といえる。
[桜に幕]、[芒に月]
[菊に盃]
[萩に猪][紅葉に鹿][牡丹に蝶]
猪鹿蝶は花札こいこいでもっとも著名な役だろう。花札をやらない人でも、猪鹿蝶という言葉は耳にしたことがあることも多いようだ。猪鹿蝶を構成する[萩に猪][紅葉に鹿][牡丹に蝶]はタネ札としてもカウントされるので、猪鹿蝶が成立しなくても、他のタネ札と合わせてタネ役の構成に使用できる。猪鹿蝶のうちのいずれか1枚を確保しておくことで、競技相手の猪鹿蝶の成立を阻止することが可能であることは言うまでもない。
タネ札は短冊札よりも枚数が1枚少なく、青短冊札が牡丹、紅葉で重複している。猪鹿蝶の札が手札か場札にあり、青短冊札も同様に見える位置につけているのであれば、両方を狙うことが可能だ。一方、片方しか確保できないシチュエーションにおいては、筆者は相手の猪鹿蝶を阻止したら、プレイングとしては青短か短冊優先で進める方が不確定要素が強い状況においては有利であると考える。
[松に赤短冊][梅に赤短冊][桜に赤短冊]
これらの短冊には文字が書かれているので一目でわかる。[松に赤短冊][梅に赤短冊]の2枚の文字は「あかよろし」である。(※「か」は変体仮名が使われている。「の」の上に「`」が付く「か」は、「可」をくずした文字である。なお、現代で使われる「か」は「加」を崩した文字である。「あかによし」という言葉を現代語に直すと「あきらかによい」であると言われるが、何がどう明らかに良いのか、謎めいていて、よくわからない。「松、梅は特上である」という意図なのだろうか。
古来より、おめでたきものといえば「松竹梅」である。日本人にとって馴染み深い「竹」が不在なのは、花札における謎の1つといえる。「桜」の短冊に書かれている「みよしの」は、桜の名所の吉野山の美称であり、意味は「美しき吉野」である。桜は「明らかに良い」ではないのが気になるが、このあたりの謎解きは和歌にヒントがあると多くの研究者が指摘しているので、本論では省略する。
タンを構成することができ、かつ、青短を構成できる札 [牡丹に青短冊]、[菊に青短冊]、[紅葉に青短冊]
花札こいこいでは札を取る(合わせる)には、同月の札が必要であることから、カス札の重要度は月ごとに異なることがわかる。この「重要度」は、花札こいこいの戦術において、どの札から使っていく(合わせる、取っていく)べきかの優先順位を決定する要素となる。
マルチコンボを形成する月札のカスと枚数を整理すると次の通り。(タネ、カス、短冊を除く)
このことから、桜、芒、菊の重要性が抜きん出ており、次点が牡丹と紅葉、その次が松、梅、萩である。
藤、菖蒲、柳、桐はマルチコンボには貢献しない月札である。ただし桐はカス札が3枚ある。ゆえにカス役をクイックに構築するうえでブースト機能を持っているともいえる。
競技開始直後の1手目や2手目といった「序盤戦」においては、自分の手札と場札を俯瞰したうえで、次のことを考える。
優先的にとるべき札は、マルチコンボ構成に有利になる札である。
[芒に月][桜に幕][菊に盃]を最優先で確保する。
花札こいこいでは、〝自分が役を作れる〟ということは、〝相手はその役を作れない〟と表裏一体である。したがって、攻撃と防御を同時に行うことができる。[菊に盃]は「花見酒」「月見酒」「タネ」の3つの役を構成可能な、花札こいこいにおいて唯一のトリプルコンボのキーファンクションである。かつ、X見酒は2枚で役になる点も強力だ。光札に目がくらむことなく、優先的に確保したい。
2枚で役が成立するアドバンテージは強力であり、強運をもってすれば最短のクイックイグジットである〝1ターンあがり〟が実現可能な唯一の役である。 (例:自分が親番、1手目。手札から[菊カス]を出して、場札の[菊に盃]を合札にして取り、山札をめくって出た[芒カス]で場札の[芒に月]も確保。こいこいせずに勝負すれば5点を獲得し、子に何もさせないまま終了できる。こいこいの醍醐味である上乗せの高揚感とスリルはなくなるが、リスク回避も戦術のうちである)*
*X見酒を禁止(あるいは省略)するケースもあるが、筆者は競技序盤のスリルと、競技終盤の一発逆転のエキサイトさにも花札こいこいの魅力があると考えている。ゆえにX見酒ありのルールを推奨したい。
X見酒の欠点は「札を追加することによる加点がなく、早々にX見酒でこいこいしてしまうと、他の役を成立するか手札を使い切るまで勝負が成立しない」という点である。
それゆえに、競技開始直後にX見酒が成立できる場合、他の札も視野に入れて、「タネは狙えるか」「三光につなげられるか」を勘案してから、こいこいするか勝負するか決めるべきである。
逆に相手に[菊に盃]を取られた場合、防御に回ることになる。[芒に月][桜に幕]は死守しなければならない。
次に検討すべきは猪鹿蝶を成立させる札の扱いである。[萩に猪][牡丹に蝶][紅葉に鹿]は、いずれもタネとのマルチコンボが可能なキーカードである。「猪鹿蝶を狙いながら、他のタネ札も集めてタネ役を作る」という手が重要となる。
赤短、青短についても同様である。手札に短冊札が複数ある場合には、他の短冊も回収しながらタンに着地することも想定しつつ赤短または青短を狙うのが基本戦術といえる。赤短と青短は、他の短冊を確保することで加点があり、そこでこいこいを終了することも可能な点が戦術上、有意義である。短冊札は合計10枚あるため、後述するタネよりも狙いやすい。
で、 またはの、どちらを取るかは序〜中盤の戦術と「どうあがるか」というプランで異なる。
【図3 光札と短冊札のどちらを狙うか】
ただし、松、桜、柳においては、同じ月札の中に光札がある。赤短を狙う場合、相手が三光を狙っている様子がないと判断できれば[松に鶴]を無視あるいは捨てるのも手だ。しかし[桜に幕]については、[菊に盃]の状況しだいで、プレイに慎重さが求められる。
柳の短冊札は獲得タイミングの判断が難しい。相手がすでに光札を2枚集めていて三光にリーチしている状態で、[柳に小野道風(蛙)]を放置するのは得策ではない。タン役かタネ役で一気にあがれないならば、[柳カス]を使って[柳に小野道風(蛙)]を確保してしまうのも無難だ。五光が実現することは滅多にないが、雨四光は突発事故的に相手側に成立してしまう場合もある。
タネ札は猪鹿蝶を含めて9枚ある。しかも芒と柳においては光札とタネ札が重複しており、タン役とタネ役は非対称性が際立っている。
【図4 タネ札の一覧】
枚数が少ない上に札を合わせずらいわけであるが、やはりタネ役は、〝猪鹿蝶狙いが崩れて、タネ役で着地する〟を基本戦術とすべきだろう。
猪鹿蝶もX見酒を構成しないタネ札は[梅に鶯][藤に子規][杜若に八つ橋][芒に雁][柳に燕]の5枚。
松、桜、桐にはタネ札がないので、手札に松、桜、桐の占める割合が高い場合にタネ役を狙うのは効率が悪い。非常に高い割合で運任せとなる。あるいは三光を狙いながら(同時に相手の三光を妨害しながら)、タネ札を無視して* カス札を優先的に狙うことで、その競技の回を流してしまう。
* とはいえ猪鹿蝶を相手に譲るのは得策ではない。猪鹿蝶のいずれか1枚は確保して相手に役が成立するのは阻止したい。
花札こいこいは構築済みの札一式(デック)を使用する〝限定環境(閉鎖)型〟のカードゲームである*。これはトランプなどと同じである。札の登場順は無作為であるが、札一式の内容は競技者が互いに知っており、そこに秘匿性はない。ゲームプレイングにおいては、相互に手札を読み合い、山札の内容を推測し合いながら競技が進む。勝利条件も実行プロセスも共通である。
*プレイヤーがそれぞれのデックを持ち寄って競技するトレーディングカードゲーム(TCG)などは〝非限定環境型〟のゲームであり、対戦相手のデックの内容と、対戦相手が勝利条件を満たすための実行プロセスは何かを推測していくところから戦術がスタートする。
手札の読み合いの基本戦術は、札のカウンティングである。カウンティングは文字通り、札枚数の計数することである。花札は各競技者が確保した札が公開状態で競技が進行するため、相手が何(どの札)を取ったかを暗記する必要がない。非常にイージーなルールであるといえる。そこでどの札を捨てる、あるいは取るかの判断が必要になった場合は、場を俯瞰すればよろしい。
各月の札は4枚で共通である。花札こいこいは札を合わせて2枚1組で取られていく。どの月の札があと何枚残っているのかを計数する。その際、「残っている札」が「残っている場所はどこか」を合わせて計数の付帯情報として意識しておく必要がある。
花札こいこいにおけるカウンティングで意識すべき対象は次の通り。
そのことから、次のことがいえる。
冒頭でも述べた通り、花札こいこいは〝運ゲー〟である。ゆえに、初心者でも手練れの上級者を悔しがらせることもできるし、上級者はそのワザでもって初心者に連勝させずに「ちゃんと戦術のあるゲームなんだ」と思わせることができる。花札こいこいは運の要素の比率が非常に高いながらも、運を迎え入れられる準備ができるかどうかは個人の技量にかかっているという点で、妥当なゲームデザインがなされていると言えるだろう。なにより、1回のプレイにかかる時間が短い。プレイ時間よりも、札を切り混ぜている時間の方が長いのではと感じるときもある。手頃にサクサク楽しみながら、ときに「長考します」と読み合いになるのも楽しい。
本稿が、花札こいこいをより楽しみたい人のお役に立てば幸いである。筆者としては、本稿の書き方や言い回しなどにまだまだ雑多なところがあり、もったいぶったような文面になっていると感じる部分もある。内容もさらに洗練できるのではと考えているので、適宜更新していく考えである。