「艦これ」アニメのシナリオへの期待

2014年10月19日 

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※この記事は艦これのアニメ化が発表された後、実際の情報が登場するまでの間に書かれた筆者の「期待」を文章化したものです。

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個人的に、艦これのアニメが、戦史をなぞりつつ、悲劇的な物語として描かれ、根底にあるメッセージは「戦争反対」であったらいいなあ、と思っている。

わたしのイメージは12話を3部構成にし、各4話。第1部は明るく楽しく艦隊の栄光的な日々を描くファンタジー。第2部は次々と仲間が斃れていく悲惨な急転落。第3部は敗戦までの濃厚なドラマと最後の場面では死と静寂が漂う美しくも哀しい終幕。海は広く、ときに険しく、ときに厳しく、そして美しい。このような海で悲惨な戦いが繰り広げられたむなしさ、使命を持って懸命に生きた艦娘たちの儚くも勇敢な生涯が描かれるストーリーだとなおよし。

第1部(第1話~第4話)

第1話はハワイ(的な位置づけに相当する敵基地)へ向かう機動部隊の話からスタートして昂揚感を演出。第2話はマレー沖海戦(的な位置づけに相当する戦闘)などの勝利で盛り上げる。第3話はシンガポール陥落(的な位置づけに相当する戦闘)までの東南アジアでの緒戦闘の勝利を描くが、軍部内対立などで陰を強調し始める。第4話はミッドウェー海戦(的な位置づけに相当する戦闘)での機動部隊壊滅。前半の中核的役割だった赤城たちが帰らぬ人となる。

第2部(第5話~第8話)

第5話から第6話にかけてはソロモン諸島での戦闘(的な位置づけに相当する戦闘)での損耗を描き、第6話の終盤では山本五十六海軍大将(に相当する登場人物)の撃墜と戦死が描かれて、主人公の司令官ほか艦娘たちの失意の中で終わる。第7話はアリューシャン列島での激戦(的な位置づけに相当する戦闘)が描かれ、もはや死が日常化しつつある様子が強調される。マリアナ諸島、パラオ諸島での戦闘(的な位置づけに相当する史実)も舞台となるが、鎮守府での日常や新しく進水してくる艦娘との交流など、少しはなごむ場面もある。第8話はレイテ沖海戦(的な位置づけに相当する戦闘)のエピソード回とし、海軍の作戦能力の事実上壊滅までが描かれる。

第3部(第9話~第12話)

第9話は硫黄島(的な位置づけに相当する基地)を始め、太平洋の島嶼の守備隊を艦隊がいかに援護したか、そして無力に敗れていったかが焦点となる。第10話から第11話は沖縄戦(に相当する戦闘)での大和の最期の出撃のほか、残存戦艦が燃料枯渇で行動不能になっている絶望的な状況と彼女たちの悔しさをテーマとする。ただし原爆投下や東京大空襲、沖縄地上戦については触れない。第12話は青函連絡船団が襲撃されて北海道(に相当する地域)の孤立が描かれるところからはじまり、Aパート終了間際で終戦。Bパートでは生存した各艦娘のその後が回想的に描かれる。酒匂を連れた長門がビキニ環礁へ向かうなか、青空と白い雲、美しい海を背景にして物語は終わる。

     *  *  *

艦隊司令部は戦争の最前線ではあるけれど、外交や政治など「外交としての戦争」のことには触れずにストーリーを進め、「この戦争が、なぜ始まり、なぜ続き、何のために(国を守るためというのは当然で、そうではなくて「戦争目的」という点)戦争が行われているのか」という点は基本的に明かされない。

司令部もしくはより下の現場の視点で進み、大本営レベルの事や政府のレベルの事については描かれないか、あたかも「侵略者(敵)」よりも不気味な闇として上層部が描かれる。上層部の意思決定機関は『エヴァ』のゼーレのようなイメージで黒幕的に登場するが、戦争目的は不明のまま。かろうじて防衛戦争的なニュアンスを漂わせる。あるいは「最終兵器彼女』での戦争のように、戦争そのものを視聴者が俯瞰的に(全体像を)捉えることができないようにしておき、各エピソードはあくまで艦娘たちの仕事(戦闘、他)と日常についてが焦点となる。最期まで深海棲艦の謎については完全解明はされず、謎を残したままとなる。

〈おわり〉