「起承転結」は最強の論述フレームワークである

2026.3.23

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目次

はじめに|プロまたはプロ志望者向けに書いています
I. 最強の論述フレームワーク「起承転結」
II. ユニークな存在としての「転」パート
III. 起承転結のフレームワークとコンテンツ
IV. 文化や言語の差を超越し普遍性のある論述が可能

はじめに|プロまたはプロ志望者向けに書いています

 文章を平易に(わかりやすく)書くスキルは、比較的簡単に修得できる。丁寧に噛み砕いて書く練習を重ねることだ。書いた内容に違和感を感じなくなるまで自ら疑いながら、繰り返し手直しし続ければ身に付く。しかし難解な概念を扱う内容に直面したときはどうするか。自分がその分野の専門家ではない場合、取材相手の発言から論点や用語を整理して文章化するスキルが必要となる。これは、わかりやすく書けるスキルとは別種のスキルだ。書くべき内容の整理ができなければ、どれほど平易な文体で書かれていてもその文章は間違いの多い、意味の通らない文章として扱われる。聞いたり読んだりした内容が難解だったとしても、書くときには正しく、飛躍なく論述(文章化)できることがプロだ。易しさは想定される読者に合わせて調整すればよい。

 論述のための文章は構造物である。よって論述文を作成するには構造を考える力が不可欠だ。筆者は「起承転結」こそが、文章内容の難易度に関わらず、あらゆる場面で役立つ最強の論述フレームワークだと考えている。誰もが国語の授業で習ったであろう起承転結は表層的な知識でしかない。本記事では伝統的な起承転結の姿を見直したしたうえで筆者独自の使い方を提示し、「なぜ起承転結が最強の論述フレームワークと言えるのか」を掘り下げる。字を連ねて文にし、文を積み重ねて論へと仕立てるうえで、起承転結はその論述の向かうべき方向を指し示し、書き手を導いてくれる。起承転結による論述をマスターすれば、どのような内容でも読み物としてまとめることが可能だ。

 文章力を高めるために、名作小説を読もうという提案をしばしば見る。名作を読んで、なぜ文章力が高まるのか。文章力向上を期待する読み手は、名作や名文から何を得るのか。1つ目は端正な文章に内在する言葉の拍節感に触れ、書く際のリズム感を養えること。2つ目は語彙とその使われる文脈パターンの学習を通じて、想像力と表現力を結びつける力を鍛えられること。だが例えるならそれらは「歌の歌い方」の練習だ。一方で論述フレームワークを知ることは「楽譜の読み方」を学ぼうというもの。古典であろうと新作であろうと、著作家は苦心してさまざまな文章表現に取り組んでたき。斬新で奇異な表現や辞書にない言葉を創造した例も少なくない。だがその文章が論述的である限り、時代を問わず構造は普遍だ。さらにいえば、構造とは論理だ。論理は発明品ではなく、自然界の物理法則のように先人によって発見され、名前が与えられ、実践によって有用性が確かめられてきた。構造について集中的に検討する本稿は、その点で一般の文章術とは異なる。

 本稿の本文はやや込み入った書き方をしている。だが私の記事作成の内部構造と手順、設計法を包み隠さず書いた。先述の通り平易に書くことは可能だが、本稿は一般向けの文章術ではない。現役プロの書き手またはプロ志望者に向けて書いているので、この程度の読解は可能だと信ずる。もしあなたが書き手としてクライアントからの要望に応えるべく悩んでいるならば、本稿が何らかのヒントを提供できれば幸いだ。

I. 最強の論述フレームワーク「起承転結」

「起承転結」は最強の論述フレームワークだ。起承転結を詩や小説など文芸作品のためだけの形式だと思っている人は損をしている。たしかに歴史的事実として、起承転結は漢詩の構成(形式)として誕生した。だが現代においては起承転結の本質的部分のみを実践へ応用することで、この知恵は文章作成のあらゆる場面で通用する思考と論述のフレームワークとして威力を発揮する。

 スピードが優先されるビジネスの現場では「結論を先に書け」と指導されることが多い。その結論とは、多くの場合は主張や意見、提案などだ。起承転結の「起」に、そうした文章の主題を置いてみると、どのような文章を構成できるだろうか。初めに提示した主題(起)を展開して詳述し(承)、想定される反論などを取り上げて回答し(転)、最後に「まとめ」として主題を再度強調する(結)という文章構成になる。

 上記の例は、起承転結は文芸専用の形式という見方への明確な反証だ。主題をどう提示し、どう展開し、どう揺さぶり、どう統合するかという、「思考の運動」そのものだといえる。言論表現の歴史においては論述的文章よりも詩や文芸の発展が先行しており、起承転結が物語の構造に多く採用されたことは事実だ。だが、さまざまな論述フレームワークが研究された現代でこそ、起承転結の構造こそが論述・思考に十分に活用可能であることを明確に示している。

 起は話題提示であるから、前提や背景の記述に縛られる必要はない。問いや主張など、起に置かれるのはその文章の主題となる。一方で結は、承と転を経たうえでもう一度まとめ直す場所である。このように、起から結へ至る論理が整理されてさえいれば、起承転結は論文や提案書、説明などさまざまな文書に自然に適合することをご理解いただけるだろう。

II. ユニークな存在としての「転」パート

 起承転結において最も重要であり、構造としてそのユニークさが際立っているのが「転」の存在だ。転を論述文に当てはめると、「しかし私の提案に対して……という意見もあるだろう」として始める反論の処理と視点の転換の段階に該当する。転は、展開(Development)ではなく、「新しい視点への転換」(New Perspective)として扱うべきだ。このパートなくして、論述を深めることも、思考の緊張感を保ったまま読者を最後まで連れていくことはできない。

 転を新しい視点への転換と定義したが、転は起・承で提示・展開された内容に対する反論(counterargument)や対比(contrast)、異視点での意味づけ変更(reframing)でもある。よりダイナミックに論理展開を深めるのが転だと位置付けられるだろう。起承転結を東アジア圏固有の文芸形式から脱皮させ、その真の姿は普遍的な思考フレームワークであると捉え直してはどうか。特に転を意識して起承転結の文章構造を考えることで、惰性的な記述を回避することも可能となる。

 なお、英語圏のアカデミック・ライティングでは、序論・本論・結論の構成で主張を論理的に展開することが求められる。起承転結を応用するならば、起と承が序論、承の後半から転までが本論の核を形成し、結が結論部に当たる。起承転結を身につけて論述できれば、自説に対する反論と再反論、譲歩といったことは転の応用が利く。論理の骨格を自分のものとして体得すれば、文体や難易度はTPO(時・場所・状況)に合わせて自在に調整できるし、報告・プレゼンといった原稿発表以外の場面でも柔軟に対応可能だ。

 以上のように転は単に反論を想定して都合よく論証する場でないことがわかる。「新しい視点」とは、対立(conflict)でも、解決(resolution)でもなく、統合(synthesis)へ進むための重要なステップだ。結論とは単に主張を述べる場ではなく、転で行った主張内容の強度試験(破壊テスト)を経た最終形である。転は主張の核心的内容が十分に批判に耐えうるかどうかを磨き上げるために不可欠なプロセスなのである。

III. 起承転結のフレームワークとコンテンツ

 さて少し視点を変え、起承転結の具体的な記述内容について検討してみよう。まず最もシンプルな形式①としては「起=事実(fact)を元に前提から始める、承=事実を元に意見(issue)を述べる、転=意見に対する反論を設定して想定される問題を解決させる、結=全体を関連づけて提案へと昇華させる」が言える。だが形式①は結論(何を言いたいのか?)を冒頭で述べておらず結まで聞き手や読者の関心を引き続ける力が必要となるため、これをアレンジする形式②としては「起=最初に提案を述べ、承=なぜその提案が成り立つのか、裏付けとなる事実を掘り下げ、転=事実が本当に事実かへの反論や疑問を想定して解消させる、結=さらなる情報で提案を補強しながら、最終的な提案としてまとめる」が使えるだろう。これらは起・結をそれぞれ起=rise、結=setという開始と終了の関係性として成立している。

 次に紹介する形式③は変化球である。「起=〇〇はXXではないか? というように命題を提示する前に反論から紹介し、承=しかし〇〇は△△なのだ、と反論を潰す事実を述べていき、転=では何が言いたいのか? と来て、ここで唐突に主題を明かしたうえで、結=その提案に対する自分の思いや意見といったエモーショナルな付加要素を足して締めくくる」という構造だ。見ての通り形式①、②、③のいずれも、起から結へ至るまでの4段階構造として共通している。3つの形式は内容の表現をどのようにアピールするかという点で、実は同じなのである。

 一見するとまったく異なる文章形式がなぜ共通だと言えるのか。それは形式①は英語でいうところの「background(背景)→ claim(主張)→ counterargument(反対意見) → proposal(提案)」というオーソドックな形式として「承」が論点(issue)の中心的役割をしており、形式②は結論を最初に提示することから「thesis(論題)→ evidence(証拠) → counterargument(反対意見)→ synthesis(統合)」というビジネス文書で一般的な構造だ。一方で形式③も同様に表現すると「problematization(問題提起)→ clarification(明確化)→ proposal(提案)→ commitment(公約化)」となり、説得に適した構成としてスピーチやプレゼンの場面で多く使われている。①②③のいずれの形式も、起承転結という器(フレームワーク)は破綻していない。

 このように、実は論述文で起承転結を活用する場合、各パートに何を入れるか(何を書くか)ではなく、4つのパート間の話題をどう推移させるかのフレームワークとして再定義できるのである。ゆえに、起のパートは論述文の冒頭として物語の導入部とは異なり、その論(話)の重心を置く場所であると捉え直せるのだ。もちろん、物語の導入部でいきなり本編のクライマックスを提示したうえで、時間軸を遡るような演出もあるから、この形式と合致しないわけではない。いずれにせよ、起承転結から文芸形式というレッテルを剥がして本質を捉え直すと、内容非依存型(content-agnostic。技術用語として「コンテンツがどのような内容であろうと共通のプロセスで処理すること」)の4段階思考遷移の型(モデル)なのである。

IV. 文化や言語の差を超越し普遍性のある論述が可能

 徐々にまとめ始めると、起承転結につきまとう「起=状況説明、結=オチ(結末)」という物語(詩や文芸)のための形式という狭い解釈を捨て去り、動きのある思考をまとめる枠組みと再定義することで、起承転結と論理文章(論述)は相性が悪いという説は否定される。起承転結は4パート構成の形式という本質を掴めれば、「立ち上げ(rise)→ 発展(develop)→ 転換(reframe)→ 収束(set)」の運動であることがスムーズに馴染むだろう。

 これはいわば、起承転結という4パート構成を使った思考フレームワークの再設計だ。だからこそ、起承転結はビジネスでの提案や文書にも応用が効く。結論を先に述べるならば「先頭に置かれるのは起ではなく、結にするべきではないか」という意見もあるだろう。だが、最初に提示される内容が結論であろうと、前提や背景説明であろうと、それが文書やプレゼンやスピーチの「立ち上げ」である限りにおいては、内容に問わず必ず「起」となる。

 転も同様に、論理を飛躍させてはならない。一見すると無関係のように見える事象を取り入れるようであっても、それは「起で提示した主題に対する、新しい視点で批判・評価・反論とその解決」であるべきだ。想定される反論を列挙しながら、主題が直面しうる問題点を解決していく手法は、主題自体の根拠を強化する機能を持つ。よって起承転結は論理的文書に向かないという認識は誤りであり、洋の東西といった文化の差や各言語の質の違いを超越して起承転結は普遍的な議論に活用できる最強のフレームワークなのだ。

 さあ、ここまで読んでくださった方は、さっそく起承転結での文章作成を実践してみたくなったのではないか。もうお気づきかもしれないが本稿の文章、これ自体が実は起承転結を厳格に用いて記述されている。本稿は4つのセクションに分かれ、各セクションは4段落で構成、各段落は4つの文で成り立っており、
 §1:起
  [段落1:起]
    文1:起。文2:承。文3:転。文4:結。
  [段落2:承]
    文1-4:同上。
  [段落3:転]
    文1-4:同上。
  [段落4:結]
    文1-4:同上。
 §2:承
  [段落1:起]
    文1-4:同上。(以下同じ構成につき略)
  [段落2:承]
  [段落3:転]
  [段落4:結]
 §3:転[起。承。転。結。](説明省略)
 §4:結[起。承。転。結。](同上)
というフラクタル図形的、あるいはマトリョーシカや入れ子的な構造を意図して書いた。本稿の第1セクションの第1段落の第1文に戻っていただければ冒頭に結論が書かれていることがわかるだろうし、本稿自体が起承転結による論述の作例となっていることを感じていただけるものと信じる。

* * *

Beginning: introduce the theme or the main idea
Development: elaborate on the theme
Shift: introduce a new perspective, often by adding contrast
Conclusion: synthesize the ideas, bring everything together,
and reinforce the original theme