アマチュアが開催するゲームやアニメの音楽の無料のコンサートとは何か

2019.8.13

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 アマチュア演奏家がやるゲームやアニメの無料のコンサートというのは、何なのか。これは全額を持ち出し(自費)で観客に演奏を披露しているコンサートである。

 コンサート開催におけるアマチュア演奏家の「個人出費」は、交通費や飲食(交際)・雑費を含めると数万円から数十万円といった金額になる。コンサートのために楽器を新調していればの数十万円から100万円以上の出費になる。それほどまでして無料コンサートを開催する動機は何か。「やりたいから」に尽きる。コンサートのようなイベント開催にも多額の費用がかかる。その負担もアマチュア団体の場合は、参加者個人の頭割りで負担する。

 二次創作などの「同人誌」でたとえてみよう。「大型合同誌(複数の作家が原稿を持ち寄って1冊にまとめていくタイプの本)を作る際に、原作の著作権者から、「本を発刊したいなら、無料での頒布に限る」という条件を課され、これを守り、印刷代やイベント(即売会等)の参加費を全額自費で工面してでして頒布しているようなものである。同人誌も「作りたいから作る」という性質ものであって、儲けたいから作るというのは最上位にくる動機では本来ない。コンサート開催は、それと同じである。

 同人誌は有償で頒布されることが習慣化している。著作権者もよほど悪質なケース出ない限りは、それらの有償頒布を阻害しない。あるいは事前にガイドラインを公開している場合もある。しかし「無料コンサート」というのは、楽曲の利用(演奏利用)は許可するが「制作物の対価などで、制作原価の回収であろうと、1円たりとも受け取ってはならない。一切、金銭的な回収手段としてはこれを認めない」という制約のもと作っている合同誌、みたいなものだ。

 さらに「二次的な利用も認められていない」という条件も暗に課されている。録音をCDにして頒布してもいけないし、映像をDVDにして頒布してもいけない。音が出て、消えるまでの瞬間に消費されて、二度と復元・複製できない頒布物、それが同人の演奏イベントの独特な点である。

 もちろん、権利者との条件交渉しだいで千差万別、ケースバイケースというか、十把一絡げにはできないことも事実であるが、一般的な「ゲームやアニメ等の音楽の無料コンサート」は、著作権法の「営利を目的としない上演等(第38条)」に相当させるため、狭い針の穴を通すような手続きを経てようやく「ファンによる趣味活動だ」あるいは「文化だ」と言って実現できている。

 とはいえ著作権法第38条は、水戸黄門の印籠のような万能の強さを持っているわけではない。38条について知る人は、著作者人格権に関する条項(18〜20条)も学ばねばならない。同一性保持権によって「勝手なアレンジ」「オリジナル編曲バージョン」は封殺されうる。

 コンサート開催には色々な手段がある。アマチュアのゲームやアニメの公演は、企業のIP(知的財産)を利用して企画し、メディアなどで堂々と告知し、公共施設も使う。二次創作的な同人活動ではあるが、その性質的にアングラだとやりにくいという性質がある。そのため結果的に「全額自費持ち出し」しつつ、関係各所の承諾を取った開催という前提になりやすい。

 堂々と公演をするには書面等でのIP利用の許諾確認が有効。許諾を取るうえでは「非営利」「非公式を明示(公式との明確な区別)」が有効。公演実施を差し止めようと思えば、権利者には権利侵害など複数の手段で止められる。主催者はコンサートの中止などしたくないから条件を遵守する。これらが「ゲームやアニメ等の音楽の無料コンサート」がアングラ化しにくい理由である。


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