システム手帳の愉悦 ――試論「システム手帳」考

2022.3.4

保有の手帳


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 一番長く使っているものは、レイメイ藤井社のDavinci Grande アースレザー(左から4つ目)。使い始めて12年エイジング(2010年購入)。180度開くようにに馴染ませたので、筆記時に革を抑える余計な手の力も要らない。リング径は11mm。

 このアースレザーを使い始める前にはDavinciのジャストリフィルのワインレッドを10年以上使っていた。金具の頭部の横の革が割けてきたので買い替えたのだが、ジャストリフィルのコンパクトさは魅力的だ。機会を見て1冊買い直している(右から2つ目)。

 左の2つは、リユースブランド品の店で購入したハンティングワールド(HW)とルイ・ヴィトン(LV)のGM。

 いずれもリング径が30mm以上あり、本体が大きい。かさ張って持ち歩きには向かないので、普段は自宅待機組なものの、直近のリフィルの保管場所として有能。ブランド品を持つという心地よさも与えてくれる。


KNOXのイルブッテーロ

 右から3つ目のKNOXのブッテーロレザーがこの中では一番新しい(2019年購入)。リング径は16mm。収容能力も高く、リングの質が良いためか、紙めくりの際も引っかかりもほぼない。本体にポケットがないので収納には別途のリフィルを使うしかない。だがそれがよい。機能美や〝用の美〟の構造を感じる1冊。

 レイメイ藤井の実験的な1品。ダブルリングの1冊。素材が安価なのと、意外と開きにくい欠点を持つが、ジャストリフィルを2冊持ち歩くよりずっと良い。もっと使い込んだら全体が開きやすくなるだろうか?

 ブレイリオのジッパー(ラウンドファスナー)型。これはリユース品のお店で購入した。ステッチの装飾が、この製品に元々付いていたものなのかどうかはわからない(カタログで見つけられなかった)。一見すると、ジッパー型の長財布にも見える。細かいものを収容できるので心強い。

「システム手帳」考――選択基準

I. 知的生産の支援|Truly Digital

 システム手帳は、仕事や私生活を充実させてくれる、静かな相棒だと思う。

 〝静かな〟と形容したのは、スマートフォンのように新着を音や光で通知する機能も、電話応対を代わってくれる人間の秘書でもないからだ。お節介やお世話をしてくれない代わりに、何も押し付けてこない。ユーザーが持ち歩く限り、ユーザーの傍らにいつも控えてくれている存在ともいえる。

 システム手帳はただの紙束ではない。川喜田二郎のKJ法、梅棹忠夫が『知的生産の技術』で紹介して一気に広まった京大カード式、デイヴィッド・アレンのGetting Things Done(GTD)、今泉浩晃のマンダラート、トニー・ブザンのマインドマップのような紙を使う知的生産の技法を実践するうえで〝至高〟に近いツールだ。

 画面という”物理的制約”を受ける電子機器と違って、紙片はテーブルやデスク上で自由に展開できる。デジタルとは、ラテン語の「digitus(指)」に由来する。指はそれぞれ離れていることから、連続的でなく分散された状態(離散的ともいう)でものを数えたりするのに向いており、英語の「digit(数字のケタ)」になった。

 つまり、離散的情報を扱えるのに向いた紙片は、理念状はデジタルである。だが、その媒体となる紙が増えると、そのようなデジタル的な使い方がしにくくなる。よって、それを束ねる、ノートが生まれた。(綴じ製本が普及することには、巻物はとっくに廃れていた)

 電子機器は、データを取り扱うという点では、デジタルである。だが結局のところ、人間に読み書きできない小箱の中に情報を押し込んでいるだけだ。人間は自分の頭脳の中でデジタル化された情報をイメージしながら取り扱うことになる。物性としてのデジタル情報は、人間にとってデジタル的でないように思う。むしろ紙のまま扱い、自由自在に並べ変えられる、綴じていない手帳の方が、よほどデジタル的なのかもしれない。離散的情報を、人間に扱える単位で可視化しながら、使うことができるのだから。

II. 制限の中の自由|The Organizer

 しかし紙は束になれば嵩張り、重くもなる。索引を作らなければ記憶だよりになり、機械的な検索性は無いに等しい。だから組織化をどのように行うか、整理の技術も必要となる。だからシステム手帳をオーガナイザーと呼ぶのは当を得た表現だ。ノートではない。オーガナイズする存在。システム手帳は紙の束が本質ではなく、そのオーガナイズできる点が本質である。その収容可能対象は、決して紙片に限定されない。よってシステマティック(体系的)なツールという点で、誰が命名したのか知らないが「システム手帳」という言葉は名は体を表すという表現を、まさに体現している。

 システム手帳とは何か。研ぎ澄ませた本質(概念)としてのそれは、開閉可能なリングと穴に集約される。紙や革の外側はこの概念の目に見えやすい部分でしかない。よって、バインダーという表現も、リングこそが本質であると考える限りにおいては正鵠を射ている(レイメイ藤井のDavinciブランドではこれをジャケットと表現している。これも本質をついた命名であり素晴らしい)。

 理念上はデジタルツール(!)であるシステム手帳にとっての欠点は、物量に負けてしまう点だろう。収容可能限界を突破してしまうと、もうそれ以上は持ち歩けない。電子機器の容量と比べて、あまりにも少なく、小さく、心もとない。電子機器は「つながる」という本質のほかに、「ドラえもんの四次元ポケット的な巨大空間」を持っている点が特徴だ。システム手帳は、この電子空間の圧縮力には勝てない。勝負にもならない。

III. 選択と集中|Less is more

 だからこそ、視点を変える必要がある。「入る分だけを入れ、持ち歩ける分だけを運ぶ」という考え方への転換が必要だ。何を持ち歩くのかを絞り込み、持ち歩く必要の無い紙片やアイテムは置いていく。そうしたスリムアップの支援ツールとしての機能も、電子機器と対比されるシステム手帳の新しい側面だろう。

 私がシステム手帳に求めるのは、紙束の保管場所としての機能ではない。気軽に持ち運べること、簡単に情報を参照でき、情報を書き込むときに秒速で書き始められること。前者を可搬性(ポータビリティ)と呼び、後者を到達容易度(または易接性(造語)、アクセシビリティ)と言おう。

 スマートフォンの可搬性は極めて高い。もともと携帯電話として設計されているから当然だ。到達用意度はつまり「使い勝手」と同義だ。サッと取り出せて、やりたいことがすぐにできる。使い勝手が良くなければ、そのツールの利用自体が苦痛になってしまう。

 私は前者においては本体サイズを制限すること、後者においてはリフィルの構成で解決を試みてきた。実際、不満やストレスを感じることがない程度には解消されている。後述するが、私は手帳をズボンの後ろポケットを外出時の定位置にしている。サッと取り出せることを重視しているからだ。目的のページや白紙へ素早く移動したいので、ベルト式やファスナー式は日常使いにはしない。アクション数を極限まで減らしていく。

本体サイズ――ズボンの後ろポケットに入れ、サッと取り出す

フリーハンドは素晴らしい

 システム手帳のサイズ選択は、そのユーザーの使い方――考え方が具現化したもの――が如実に現れる。リフィルを選んで構築された1つひとつの手帳が世界に2つとないものであるように、手帳の使い方も、そのユーザーによる、そのユーザーのためだけのものとなる。

 私が日常的に使うスターティングメンバー手帳とする条件は1つのみ。ズボンの後ろポケットに入ること。落ちさえしなければ、ポケットからはみ出す分には構わない。自転車や電車に乗って座席で座っても、ズボンに入れっぱなしで問題ないことが望ましい。

 手に持ち続けるのはNGだ。よって、バイブルサイズのバインダーにおいても、リング径の大型のものや、横向きのタブ(インデックス)まで覆える大型のものはスタメンにならない。それらには自宅待機を命じる。中高生が百科事典を全巻持ち歩ことはなく、通学に同伴するのがコンパクト辞書であることと同じだ。

 もちろん電子機器は「全部を持ち歩ける」という点で圧倒的に分がある。だがここでは、その話はしない。

 リング径とバインダー(カバー)全体のサイズには相関関係がある。リングが巨大でカバーの横幅が狭いということはまずない。リングの直径+リフィルの横幅がカバーの最小幅となるからだ。よって、自ずと、ズボンの後ろポケットに入るバインダーは、リング径が20mm以下のものとなる。Davinciジャストリフィルサイズの8mm、私が最も利用しているDavinciオイルレザーは11mm、KNOXは16mmだ。

外形寸法こそが最重要

 手帳に限らず、電子機器であれクルマなどであれ、モノを買う時はスペックは気になる。だが私はそれ以上に寸法(サイズ)を気にする。寸法が好みであれば、スペックが犠牲になっても割と平気だ。サイズは「その道具の使う前後の時間(持ち運び中など)」にも影響を及ぼすからだ。バイブルサイズの手帳を自分のワークスタイルやライフスタイルの基準としてみると、意外とこのサイズに近いものが多く、揃う・整うことが多いことに気づいた。

 下の写真は2010年頃のもの。左から、当時愛用していたハンドヘルドPCのJornada 720(原稿を下書きするくらいの仕事はこれで十分だった。しかも本体の記憶容量だけでなくコンパクトディスクを付けられたので万が一本体に事故があってもコンテンツデータは回収可能)、コードバンの長財布(やはり革製品の特級はコードバンだろうと思う)、メガネケース(バネ口)を転用したのペンケース(サッと取り出せて便利かつ薄い)、バイブルサイズの手帳、新書本。サイズが揃うということは、収納や運搬に大きなメリットがあることは容易に想像できる。ちなみにバナナも長さがこれらとほぼ同じ。バナナは軽食として、持ち運びにも最適なので好きだ。なお、私には、Mini 5リングは手帳としては小さ過ぎた。

使い勝手――手帳は自ら組み立てるもの

ファジーなシステム

 情報は増えれば増えるほど、探しにくくなる。探し物は何ですか? 見つけにくいものですか? 違う。探す場所が増えたり広かったり、探す対象が多過ぎたりしているのだ。井上陽水の歌の続きは、まだまだ探す気ですか。それより僕と――踊るよりも、システム手帳に変えませんか。夢の中へ入らずとも、夢を現実へと引き出してくるもの。その可能性がシステム手帳にはある。

 使い勝手の良し悪しは、知的生産の品質(生産性を含む)を大きく左右する。道具を自然と使いこなせるには、たくさんの試行錯誤が必要だが、その失敗案の死屍累々の上に、一握りの定着する成功体験がある。それが「使いこなす」ということだ。

 高度な工夫の実践が使いこなし術なのではなく、いかに程度を下げていき、工夫の余地もほとんどなく、安定化・定着化した状態が「使いこなし」の本質だ。

 ツールに使われている状態とは、ツールに振り回され、その使い方を絶えず確認したり、模索したりしていることを指す。使い勝手に迷う道具は、改善するか、使用を諦めるかしかない。システム手帳のユーザーは、自分でシステムを構築する自由がある反面、自分がその道具をどのように使いたいのかを自ら身につける必要性の表裏一体を経験する。

 でも、本当のところは、それほど身構える必要もない。「どう生きるか?」を哲学的に問いながら、自ら定めた行動規範に基づいて自らを厳しく律しているような修行僧や求道者でなくていい。

 システム手帳は、実際のところ、とてもファジーなのだから。馴染むことは続け、馴染まないものや気に入らないことは変えればいい。それがシステム手帳の利用をやめるということも含めて。縛られる必要はない。強いていえば、「せっかく買ったのに、使わないのはもったいない」ということくらいだろうか。それさえも、自縄自縛だと気付きさえすれば、いつでもその束縛から抜け出せるはずだ。

リフィルの順番とシステム手帳のビルドアップ(構築)

 システム手帳には慣れがいる。しかし〝勝手に使える使い勝手の良さ〟は初めから用意されている。綴じ手帳のルールを踏襲しようが、無視しようが、それもまた自由だ。私自身も、綴じ手帳によくある「年間カレンダー→月間→週間→ノート類」という順番をシステム手帳ではまったく無視する。「読むだけの抜き書き→ノート→スケジュール→備忘録」という順番にしている。

 よくある順番

 1)年間カレンダー
 2)月間カレンダー
 3)週間スケジュール
 4)ノート類
 5)その他の情報(路線図とか)

 私のシステム手帳のリフィル順番

 1)読むだけの抜き書き(参照情報など)
 2)ノート(メモを書いていく場所)
 3)スケジュール
 4)備忘録(もっぱら参照用でここに追記することは滅多にない)

 ②

レフト式を使っているときは、右ページはノートの役割をする。一時期の私は付箋の台紙にしたり(①)、消し込み式のToDo管理の場所にしたり(②)といった使い方をしていた。

筆記時のリング干渉の解決には

 システム手帳の泣き所として、紙による段差や左ページを筆記時に手にリングが干渉することが挙げられる。これをシステム手帳が使いにくい理由として挙げる人も少なくない。この段差を解消するには、適量の紙があり(少な過ぎるとリングが出っ張るので書きにくい)、筆記記入の機会が多いページはなるべく手帳全体の真ん中に来る方がよい。

 具体的には、先頭や最後の方には参照がメインのリフィルを配置する。これによって段差問題はある程度解消する。

 また、左ページに記入欄が多いリフィルは避けてしまうという手もある。リフィルの「表面」が右ページに来るのであれば、なるべく表を使う。

 主に左ページがメイン筆記スペースとなるのは、スケジューラーかと思う。レフト型ウィークリーを使う場合、この不都合は回避不能。よって、段差の解消によって書きやすさを確保するほかない。

用紙は白過ぎず、薄過ぎず

 リフィルのお気に入りは3つある(うち1つは生産終了なのでいまは2つ)。私が気に入るポイントは、白過ぎないことと、薄過ぎないこと。

I. ノーブルリフィル(ライフ社)


取引先ごとにタブを付けた
仕事で使ったノートリフィル
年ごとのストック

 私が最も愛用しているのはライフ社のノーブルリフィル。フリクションボールペンでこすってもシワができにくい厚みがあり、万年筆はインクが裏抜けしにくく、鉛筆もしっかりと字が乗り、ゲルインクも水性インクもボールペンと相性がよく、なにより落ち着いたクリーム色が心を穏やかにして時間の流れを緩やかにし(漂白された紙を前にすると戦闘的な気分になる)、蛍光マーカーも期待通りに発色し、方眼はグリッドが適度に薄くて書きやすく、無地は紙の繊維の向きが目視できるので字が整う気がする。ライフ社は日付が印刷されたスケジュールリフィルを発売していないのが惜しい。

 ノーブルリフィルの表紙は厚紙で耐久性があり、かつ美しい。私は表紙のLIFEの箔押し文字の上に「MY」と追記し、日付を書き加えた上で過去のリフィルは綴じ紐でゆるく繋いでいる。この束は手近な箱に入れて保管中だ。ときどき振り返って紙をめくってみると、忘れかけていたスローガンや勉強した言葉、メッセージ、その当時の意識や決意などがありありと蘇ってくる。過去にどんな出来事があったかへの関心は古くなるほど薄れていくが、普遍的な知識や情報はそのつど発掘しなおしている感覚だ。自分ひとりで温故知新ができる。


業務関係のノートリフィルは処分したが、プライベートなものやスケジュール関係は年ごとにまとめてある。ときどき見返し、メモした格言や箴言、金言、詩句などを振り返る。

II. BINDEXのリフィル

 カレンダーのリフィルの中では、能率手帳と同じと思われるBINDEXの紙が好みだ。耐久性があり、クリーム色が字と調和し、印字部分のオリーブ色と朱色に品がある。書体もシンプルかつ端正なものが採用されていて飽きがこない。

 BINDEXのリフィルには漂白されたものと、クリーム色とがあるが、私はだんぜんクリーム色を選ぶ。紙の厚みも適度であり、ややツルツルではあるが、強くてしなやかで頼り甲斐がある。

III. バーバリー(ぺんてる社)【生産終了】

 もう15年近く前になるが、ぺんてる社がバーバリーのライセンス提供でリフィルを作っていた時期があった。この時の用紙とスケジュールリフィルのデザインも素晴らしかったのだが、ライセンスが解消されたとかの理由で廃盤となってしまって久しい。


年間カレンダーは、単に挟んでいても面白くない。2012年には各月の稼働日(平日=業務日)と休日を区切って視覚化してみたりした。

筆記具は紙と手の相性に加え、持ち運びし易さを重視


小型のシャープペンを使っていた時期もあった

 お気に入りは3色のフリクションボール。芯は0.38mmだと5mm方眼の中にも文字を書きやすくて私にとって最適。とはいえこれまでにはシャーペン、鉛筆、万年筆。ボールペンもBICなどの安価なものから、日本が誇る書き味抜群のもの、海外の著名ペンブランドまで、手の届く範囲で色々試した。しかしここ十年は圧倒的にフリクション。次いでペン先の太さがMのパイロット社プレラを愛用している。これはカジュアルに使えて良い。キャップ式が好きなのだ。

 筆記具そのものよりも、私が関心があったのは「どのようにして手帳とペンを一体化して持ち運ぶか」であった。ペンホルダーの利用が鉄板だが、バインダー自体の横幅が広がることや、鋭利な先端部分を露出させたくないこともある。私は以前から、バインダーのリングに別途のリングをセットして、そこにペンを引っ掛けたりぶら下げたりして収納することが多い。(下写真①)

 引っ掛けられないフリクションスリムを使っていた時は、小さめの輪ゴムをリングにセットすると、金具同士の干渉も起こらないちょうどいい収納方法になった。ペンホルダーを内側に作ってしまう発想である。(下写真②)

 ストラップ紐は、細い割には強度がある。リングに引っ掛けて、アイテムはポケットに入れて集約した時期もある。ガチャつかないし、重力に負けて下に寄ってしまうこともない。(下写真③)

 ② ③

その他のアイテムも工夫しだいで装着できる


 さらに私はシステム手帳に以下の様なものを仕込んでいた。

・時計(小型の腕時計からベルトを外し、ヒモをつけてリングから吊り下げる
・チャーム
・新聞や雑誌の切り抜き
・家の鍵 *
・交通系ICカード *
・薄型のUSBメモリ**
*印のものは、今はAbrasusの薄い財布に統合しているので手帳には入れていない。**印のものはデータ保存先をクラウドへ移行したので、USBメモリ自体を持ち歩いていない。

 会議中にふと時間が気になった場合でも、手帳の最終ページをめくれば時間がわかる。腕時計をチェックしにくい場面でも、これならば相手からは手帳を捲っただけにしか見えないため好都合。

 カバーにポケットが付いているタイプの場合は、この場所にアイテムを仕込みやすい。段差を使ってモノを入れるので紙が浮くのも最小限に抑えられるし、ポケットの段差による紙の凹みも解消できて一石二鳥だ。上述の通り、ここにペンを挟むことが多い。

 新聞の切り抜きはただ単にカバーに挟んであるだけだが、革と新聞紙の双方に摩擦がそれなりにあるため、脱落することは滅多にない。よってリングでは綴じない。日経新聞が毎年の元日に掲載する年間予定表はだいたい一年を通じて挟んでおり、定期的に見ている。

 以前はこのスペースにUSBメモリや細いボールペンなども吊り下げていた。

 同じ様なポケットが表紙側にもある場合、そちらに仕込むことは可能だが、表紙をめくるときにアイテム類がガチャガチャしやすいので不向きだ。その点、裏表紙側を最初にめくることはあまりないのでちょうどよい。

大きな記事は畳んで持ち歩く

A4用紙との共存はセンスよく行う

 A4用紙の扱いは、A5のバインダーならばなんら問題なく、もっとも相性が良い。一方、バイブルサイズやミニ6リングの場合はコツがいる。

 A4用紙の折りたたみ方には、超整理手帳のような「横位置での蛇腹折り」と「A6サイズまで畳んでいく四つ折り」の2つのパターンが主だろう。蛇腹折りの場合、さらに最後に二つ折りにしてA7サイズまで小さくし、カバー内側のポケットにで持ち運ぶ手もある。

 これらの折り方は、用途によって使い分ける。蛇腹折りは、その紙を展開して参照する機会が多い時や、クイックに取り出す機会の多い資料の場合に選択する折り方だ。場合によっては穴を開けて綴じ込んでもいい。

 四つ折りは、参照頻度が低く、落ち着いて一人で見る書類やチラシなどで選ぶ。嵩張り具合はどちらも対して変わらないので、その紙の使い方で折り方を決めるとよい。

 折った後の嵩張り具合を減らした(圧縮したい)場合でおすすめなのは、巻き三つ折りだ。文字通り3つ折りにする。これは蛇腹でも、巻き込んで折る形でも、どちらでもよいが、蛇腹だと紙が開き易く、落下しやすくなるように思う。三つ折りにすると、おのずとバインダーか飛び出す形となる。これを邪魔のように感じるかもしれないが、逆に言えば、バインダーを開くことなくその紙を引っ張り出せる(!)ことでもある。その紙資料への到達容易性(アクセシビリティ)が極限まで高まる方法だと思う。

 ついでにB5用紙との共存も述べておく。B5用紙の短辺は182mmのため、170mmのバイブルサイズのリフィルと近い。リフィルより12mmほど大きいが、カバーの中に収まるため許容範囲だ。そのため、実はバイブルサイズの手帳においては、A4よりもB5用紙の方が相性がいい。

スマートフォンとの併用は、主従関係を明確に

 システム手帳とスマートフォンは、完全に役割分担して両方を使うか、どちらかに機能や使い方を寄せていくか。そのどちらに行き着くだろう。

 たとえばカレンダーアプリに登録した内容を手帳に書き写すのは、自分へのリマインドとしては有効だと思うが、どちらかを〝マスター〟とし、もう片方を従属する形にしなければ、二重管理によるトラブルが生じるリスクが高い。二度手間を掛けるのは、記憶へ定着させる上では効果があるが、何もかもをそうするのは無駄だ。よってスマホと手帳で機能が被る場合、ツール同士の主従関係(優先順位関係)を明確にしておく方が良い。

2010年頃の私のデスク(オフィスにて)。手帳、通勤中によむ本(新書か文庫)、小銭入れ(ポニースキンのガマ口)、iPhone(当時は3GS)。アイテムが4つなのは、ズボンの前後左右の4つのポケットにそれぞれ入る分までしか(通勤時には)持たない、と決めていたからだ。

〈おわり〉