〈更新履歴〉
2019.9.22|8巻発売後
* 追記 2020.5.16, 一部修正5.18, 5.31|9巻発売後
** 追記 2021.2.24|10巻発売後
† 追記 2021.8.11|ワールドガイド 冒険者バイブル読了後
XI 追記 2021.9.20|11巻発売後
XII 追記 2022.8.11|12巻発売後
XIV 追記 2023.12.16|13巻・14巻発売後
XIV 祝完結14巻御発売。単行本刊行と同じペースで進行してきた本考察記事ページも13〜14巻の内容分析と解釈を整理中です。追って追記予定です。
■差し当たってのメモ:
改めて全巻を通読して13-14巻を振り返ると、冒頭から最終巻まで構成は一貫しており、断片的に提示されていた情報もブレなく主張や世界観と一体化していることがよくわかりました。本作の世界において魔物は人間同様に自然界(動物界・植物界・菌界・原生生物界)を構成する「生き物」として等しい存在(生命体)です。それらの各個体は生存本能(=欲)に基づく食物連鎖で繋がっており、捕食者・被捕食者といった関係性はありつつも厳密には上位・下位(優位・劣位)とはされていません。捕食者はたしかに相対的には「強者」ですが、弱肉強食論的な総取りの無敵者ではなく、食物連鎖における役割(相互影響性)のひとつを担っているにすぎないと言えます。その連鎖の中においては無駄なものは何一つありません。すべてはつながっているからです。自然界の連鎖(循環)において無意味なものなど一つもないことを、ミスルンのセリフ「そうか 野菜屑にも使い道が」「それはいいことを聞いたな」(14巻, P76)で象徴させています。
一方で物語の最終段階で本作における悪魔の実態は、自然界(現実界)に漏れ出している「魔力(無限エネルギー)」の対人間用インターフェースであることが明らかとなりました。無限である魔力が「貪欲の美味(〝獲得〟による成功的体験と〝獲得=消費=喪失〟(獲得は同時に消費による喪失と一体である両面性)」を知ってしまったことで、無限から有限へと、存在の次元を落としてしまいました。こうして「自然と同じ次元へと堕落した無限の魔力」は神や悪魔と呼ばれつつ「人間の持つ『欲』の獲得」を続けてきました。しかし人間が一枚上手だったといえるでしょう。無尽蔵エネルギーの危険性(諸刃の剣)を察知して封印。しかし最後には、人類自身が持つ自己破壊願望(破滅願望、タナトス、デストルドー)の実現に悪魔は手を貸してしまい古代文明の滅亡を引き起こしました。この点は本編中のみならず、単行本収録のおまけ漫画でも強調されています。生存への知恵と破滅衝動の両面を人間の本質とし、そこから善悪や正邪を切り離す。作者はこの点に強い主張があることが伺えます(13巻, P175)。本編中のミスルンの発言においても「完食されたかったのだと思う」は、この破滅衝動のひとつの形であるでしょう(14巻, P73)。
自らの欲を満たそうとした結果、供給源である人類を失った悪魔は、失敗の轍を踏まないためにもより慎重を期すようになります(シスルと翼獅子の関係性がその代表的エピソード群でしょう)。ライオスら冒険者を巧妙に騙してシスルの軛(くびき)から抜け出した悪魔でしたが、最終決戦でライオスに敗れます。ライオスの――あるいは人類の――欲求のひとつである「好奇心」がライオスの切り札でした。有限存在に堕して「生き物の一種」となった悪魔が欲するその「貪欲の味」をライオスが知りたいと願う(さらに「消化することができる」13巻, P159)という逆転劇がその場面です。
食物摂取が不要の無限存在である悪魔を食物連鎖の「規律」(同, P61)に巻き込み、ついに悪魔から貪欲を奪い、無欲化=自己の無意味化を達成します。規律とはいわば、自然界の掟、生存のためのルールとも言い換えられます。生き物は個体存続と種の保存のために「食い続ける」しかありません。これは、「食わなくてもいい(食わなくてもよかった)存在」であった魔力(エネルギーそのもの)が消費される側から、消費者側の世界に踏み込んでしまった場合にどのような事態が起こるのかという、壮大な思考実験の表現といえるのではないでしょうか。それが本作の真相であろうといえます。現実に、私たちの周りにある空気や水、鉱物・土、熱・火に意思はありません。有限資源である石油やレアメタルにも意思はありません。これらの非生物が欲=自我を持って「空腹感(飢餓感)」を知り、人間と対話可能なインターフェースを持ったらどうなるか。そうした仮定によって描かれた叙事詩が本作です。また、本作では古代人が悪魔を神と表現した以外では一切の神格が登場しませんでした(13巻, P46, 47)。全能の無限を神(人格神)ではなく悪魔と位置づけ、その力の行使を禁じられた古代の魔術(エネルギーを扱う技術)とした本作中の登場人物の発言や世界観設定からも、作者の大胆かつ緻密な物語構成力を感じます。
この記事は『ダンジョン飯』7巻以降でレギュラーの登場人物となっている「カナリア隊」に関する内容を中心とした考察です。『ダンジョン飯』は現在進行形の作品であるため、本記事は一種のノートのようなものとして、単行本の発刊を追随しながら更新を継続しています。
『ダンジョン飯』の連載が始まってしばらくの間、私(本ページ著者)は本作品について「食い道楽系作品の延長線上にある異色グルメファンタジー」という印象を持っていました。英語の副題「Delicious in Dungeon」は、まさにそのイメージ通りだといえます。しかし物語が進むにつれて、その設定の巧妙さから、本作の描く〝ガストロノミー〟の実態は「食物連鎖と生態系への考察から成り立っている、緻密な〝いのちの物語〟である」ということが明らかとなりました。本作品における「食」は物語全体への導火線に過ぎず、壮大なテーマの導入部分(同時にそれは物語の〝本質〟に関する表層の一つでもある)に過ぎません。『ダンジョン飯』は明らかに、ゲーテの『ファウスト』の系譜に連なるエピック(叙事詩的)ファンタジーです。
特に、このページで情報整理と考察を展開するエルフたちは、主人公の「生き物を捕って食うこと」の理念と対置された存在です。エルフの迷宮調査隊は、ダンジョン内部の食物連鎖からは意図的に断絶された侵入者であり、ダンジョン内のエコシステム(生態系)と隔絶した外部の存在として描かれています。本作品では、生命体とは「欲」によって成り立っているシステム的(メカニズム的)存在であると明示しつつ、「欲そのもの」についてはいわば自然なこととして肯定的に捉えています(これらのことをエルフ側リーダーであるミスルンが語っている点も本作品のすばらしい味付けです)。一方、「欲(欲望)」を増幅させる、誘惑の権化たる悪魔の立場も独特です。
理想の世界を夢見ても、それは万人にとっての幸福の世界とはなりえない。これは人類の進歩の中で価値観の多様化と社会全体の包摂が主張されつつも、人類規模での共通の「大きな物語」が消失した現代、言い換えるならば「ポストモダン」の時代の物語です。が『ダンジョン飯』は、無宗教的自然観が強く、実体二元論をやんわりと否定しているような思想的構成も感じられるなど、いま最も目が離せない現在進行形の叙事詩であると感じられます。
「カナリア隊」は俗称である。正式な部隊名は7-8巻時点では不明。9巻時点では「カナリア隊」と呼称される場面が多い。単に「部隊」とも言われる。XIIエルフの女王自身も「カナリアたち」(12巻P131)と述べていることから、俗称とはいえエルフの社会でも広く通用している表現のようだ。† なお、正式名称は「迷宮調査隊」である(WG P73)。
小鳥の船首像を持つ大型船で「島」に乗り付けてきた。カナリア隊の直接的な由来は不明であるが、船首の小鳥像がダンジョン飯の世界での由来であろう。現実的には「炭鉱のカナリア」に由来するものと思われる。ただし、ダンジョン飯の世界に「炭鉱のカナリア」があるかどうかは定かではない。地下迷宮を進むドワーフなどがカナリアを連れている描写は現時点では見かけないため、そうした無臭性の毒ガスに対する警戒としてカナリアを持ちいる習慣は『ダンジョン飯』の世界にはないのかもしれない。†「 炭鉱夫たちがカナリアを連れていたことに由来し、彼らの任務を揶揄した俗称」とされている(WG P73)。船首の小鳥像は「春の訪れを意味するヒバリ」とのことである(同)。
メイフラワー号到着300周年記念切手
(1920年発行)
船は実在のモデルがあるように思われる。形状から見て、16〜18世紀の大西洋航海に使われた大型帆船である。この時代の歴史的な船として思い浮かぶのは、イギリスからアメリカへと渡った清教徒(ピューリタン)を乗せたメイフラワー号だ。船体の全長はおよそ30メートル前後、全幅は7〜8メートル。オランダで建造された大型の貨物輸送船(フリュート型)。外観はガレオン船に似、帆装はブリッグやシップ型、速度が出るように高いマストを備えていた。メイフラワー号がアメリカへ到達したとき、乗員約30名、乗客102名を乗せていたとされる。
† カナリア隊は物語の舞台である「島」の最寄りにして最大の町「カーカブルード」(7巻P143)のある大陸(† 東方大陸(WG P130))とは異なる「北西の大陸にある都市」(同)、すなわち「西方エルフ王都」が本拠地である(WG P131)。
「迷宮の危険性が一定を超えた時やってくる 彼らの任務は迷宮の調査そして制圧」(7巻 P63、カブルーのセリフ)。前から島主に圧力をかけている噂があったが、強硬策に出たとカブルーはシュローに説明する。
9巻 P189
* 迷宮の危険性は、迷宮がなぜ存在するかに関連する。『ダンジョン飯』の世界では、「永久機関を求めた古代人」(9巻P188)は、「無限が存在する異次元と門を繋げた」(同)。しかし「〝あちら〟の生物も招いた それが悪魔」(同)であった。悪魔が好むのは人間の欲望であり、人間の欲望を食うことで悪魔は力を得る。欲望はいわば人間の強みであり、弱みでもある両面性のあるものだ。悪魔が人間の欲につけ込んでくることは、『ファウスト』以来、一貫した悪魔と人間の相互関係のテーマである。「迷宮の力すなわち悪魔は強い欲望を持つ者を招く」(9巻P187)、「とりわけ強い欲望を持つ者を主に選び望みを叶えさらなる欲望を引き出す」(同)。迷宮の主となったものの末路は悲惨である。「欲望を全て食われた者は皆衰弱死した」(9巻P188)とのことだ。「古代人は悪魔が自由に門を通ってこないよう迷宮を作った」(9巻P189)のであり、「古代魔術は悪魔召喚の儀だった」(同)。人間の欲望を食って十分に力を蓄えた悪魔は「すぐにでも殻を破りこちらへやってくるだろう」(9巻P190)とミスルンはカブルーに解説した。この悪魔の出現が、すなわち「迷宮の危険性」であり、悪魔の出現阻止がカナリア隊の真の任務である。[9]
* 「古代人」が求めたという「永久機関」は、いうまでもなく熱力学の法則によって否定されている存在である。エネルギーが無から生じることはなく、また無限に変換することも不可能であるため、永久運動する機関は実現しえない。だが古代人が開いた「異次元」は、どうやら現実の物理法則を超えたエネルギー(無限)を取り出しうるものであるらしい(9巻P188)。つまり「悪魔(あちらの生物)」とは〝無と無限に関する存在〟であるようだ。しかし長命なエルフをはじめ、人間には生命力の限界がある。「悪魔」がどれほど「欲」を欲深い人間(この「欲」は「高い理想」とも言い換えられることに注意が必要だ)から取り出そうとしても、〝因果律そのものに対する反逆、エントロピーを凌駕する願い〟(see also:『魔法少女まどか☆マギカ』, 2011)は単一の人間から容易には取り出しきれないのであろう。[9]
9巻 P188、5コマ目
* あらゆる生命体は「欲」によって動かされている。これは原始的な構造の生物から人間のような複雑な構造の生き物まで共通事項であり、生命体とは生命維持のために希求する根源的欲求を含めて「欲望を機構化したもの」と定義できるだろう。「宝虫」や「サキュバス」など、『ダンジョン飯』には「欲望」に絡んだエピソードが多いこともうなづける。人間は「生存本能」だけで生きているのではなく、マルシルの古代魔術への知識欲、ライオスのモンスターへの想いなどもすべて「欲」である。「願い」も「向上心」も「希望」も「煩悩」も「恋焦がれる懊悩」の類いもすべて「欲」だ。願う内容がたとえ他者の幸福を願うようなものであっても、究極的にそれは「願う本人の個人的願望(あるいは「そうあって欲しい」という自己中心的願望)」である。悪魔はそれも狙い、幻覚的な幸福感を提供する。だが迷宮の主となって迷宮の底に閉じこもっていても、世界そのものは小指の先ほども変わらない。迷宮の主だけが「願いが叶うという〝麻薬〟」にはまっている状態だ。悪魔はこの麻薬を提供してくる「売人」というわけである。犠牲者は悪魔によって無上の幸福を経験するが、その代償として徐々に複雑化した感情をこじらせていき、しまいには衰弱死するまで「気力・欲(言い換えるなら「生命力」)」を食い尽くされる。
なお、こうした迷宮の特性はすでに7巻でセンシがライオスたちに具体的に説明している。「……長く迷宮で暮らしてひとつ気づいたことがある」「この迷宮は人の欲望に強く反応する」「富 知識 名声……」「オークたちのような迷宮へ〝求めない者〟に対しては寛容だが 何かを求めた途端 牙を剥く」「迷宮の反応は更に苛烈になるだろう」(7巻209、すべてセンシのセリフ)。
8巻 P109
「一度迷宮の欲望に囚われてしまった者にもはや言葉は届かない」
このセリフは元・迷宮の主人であったミスルンだからこそ重みのあるセリフである。しかし12巻においてマルシルはまだ迷いの中にあり、ライオスたちの言葉が届いている。
XII こうした欲望は、本人が長らく感じていたぼんやりとした不安や漠然とした願いが確固としたものになることで明確な形を取る。本作でも夢魔との戦いの最中(マルシルの夢の中にて)、ライオスがマルシルに対して「親しい人間が先に死ぬという恐怖に怯えるマルシルに君なら克服できると言って励ました」(12巻114頁)ことでマルシルは欲望の実現を意識するようになった。これはいわば映画『インセプション』で描かれた、相手の夢に潜入して深層意識に想念(思考)を植え付ける行為(inception)に相当するであろう。[XII]
XII 本作で悪魔が求め、人間たちに持つことを要求する欲望は、夢や願いと同義である。ライオスによるマルシルへの説得は、いわば欲望と理性の衝突である。「欲望がなんでも叶う力か」(12巻P221)「その力で世界を作ったら楽しいだろうな」(同)「好物しか並んでない食べ放題の宴会みたいに」(同)。これらのライオスのセリフは重要だ。自分にとって都合のよい虚像で自らの周囲を固め、あるいは言いなりにして閉じこもるのか。それとも趣味や嗜好の異なる他者の存在を認めて自らの中で折り合いをつけるのか。社会と自己の関わりが問われている。[XII]
XII 「今すぐその力で君の夢に賛同する新しい俺たちを作ればいいだろ」(12巻P226)「本当はわかっているんだろう その力の歪さに」(同)。そしてライオスは喝破する。「不愉快で不都合で不安なものが存在しない理想の世界 そこにはきっと幸福もない!」(12巻P227)「その力は手放すべきだ!」(同)。これは現代社会を帝国支配的に牛耳る、すべての〝ビッグブラザー〟への問いかけでもある。理想の押し売りは、善行か悪行か。そのような二項対立の判断さえも、本作は超越している。[XII]
XII 「魔法で何でも叶うので、魔法使いたちには「夢」がどのようなものかわからない」。これは『映画 すみっコぐらし 青い月夜の魔法のコ』のコンセプトである(映画すみっコぐらし新聞特別号, 報知新聞社, 2021)。この「夢」は、ダンジョン飯における「欲望」に置き換えられる。「悪魔のいる無限の世界には「欲望」が存在しない」(10巻P70コマ7。翼獅子のセリフ)。さらに言えば、ここでいう夢や欲望は、自我に等しい。[XII]
XII 11巻P137でマルシルは「こんな欲望 失えるのなら失いたい」とミスルンを前にして語る。二人の議論は平行線をたどり続け、12巻P159でミスルンは「ひとつの欲望を満たしても次の欲望がお前を苦しめる 酷い乾き(ママ)と飢餓感 その乾き(同)と飢えは決して癒えない」(※乾きは「渇き」の誤字であろう)。欲望=自我ならば、「生きる」とは苦しみ続けることなのだろうか? 12巻P182〜189で展開される翼獅子の主張は、まさに生命の理想を「永遠の絶頂感」に求める呪縛と同質のものだ。本作におけるその答えは、断片的に伏線的に散りばめられていると感じる。おそらく最終巻で描かれるだろう。ひとつの宗教的もしくは心理学的な回答に似た、「救い」が提示されると予想している。[XII]
* 『ダンジョン飯』に登場する悪魔の出典が実在の古典的書物『ゴエティア(Goetia)』の「ソロモンの72柱」に基づいているならば、「狂乱の魔術師シスル」と関係し、ライオスを〝誘惑〟しつつある「翼獅子」は、その姿から「ウァプラ(Vapula、ヴァプラ)、またはナフラ(Naphula)」の名を持つ悪魔であると推測される。ウァプラは〈グリフォンの翼を持ったライオンの姿で現れるとされる。あらゆる手作業を器用にさせたり、哲学をはじめとする学問に精通させる。『ゴエティア』によると、地獄の36の軍団を率いる序列60番の偉大にして強大なる公爵〉(出典:ウァプラ|Wikipedia)である。ミスルンを〝誘惑〟した悪魔は「ヤギの頭部を持つ」という1点だけで判断するならば「バフォメット(Baphomet)」(出典:バフォメット|Wikipedia)となる。が、独自の世界観と設定構築の色が強い『ダンジョン飯』において、こうした情報を恣意的に当てはめることは好ましくないかもしれない。参考情報として提示するにとどめる。
カブルーはウタヤ事件で「当時の副長が連れ帰って数年間育てられた」と述べていることから、カナリア隊について知識がある。また、このセリフから、現在の副長はカブルーが世話になったエルフとは別人物であることもわかる。* カブルーが少年時代、世話になった様子は9巻で描写される[9]。
* カブルーの「育ての親」の氏名は明示されていないが、陰気なミルシリルである。カブルーの剣術稽古をつける前日談と、ミスルン救出時のキャラクターの造形は「目の描き方」「髪型」などに共通点が多く、外見上は同一人物と認められるだろう。九井諒子氏はキャラクターの目の描き方は脇役やモブにおいてもかなり明確に描き分けている。カブルーに接するときと口調や表情に違いがあり、個性(性格上の二面性)と考えられる。[9]
部隊の総人数は不明。船内に一定数の本隊がいて、ミスルンら6名は交渉のための先遣隊と思われる。(7巻 P170のパッタドルのセリフ「今すぐ上陸命令を出しましょう!」などから推測)。* 9巻でリシオンの説明によると「パッタドルが暴走して待機中の仲間を上陸させた(9巻P197)とある)。** 10巻にて本隊のメンバーが登場し、迷宮の1回にてタンス夫妻と衝突する様子が描かれる(10巻P96〜P97)。XI 12巻P113で、フラメラに率いられたカナリア隊本体が水辺の回廊に到着する様が描かれる。この同頁のコマ1では50名ほどを確認できる。
カナリア隊のメンバーについてカブルーは、「半数は古代魔術に関わった犯罪者で構成」「全員が迷宮攻略のためだけに技を磨く部隊」(8巻P133)と説明する。この点からも、カナリア隊自体が戦闘集団でありながら、特定任務に特化した「特殊工作部隊」とも言える。
* カナリア隊のメンバーは古代魔術への関わり方も不法に関わったことで罪に問われた「罪人」と、その看守として機能する貴族の子息で構成されている(9巻P137)。その比率は「看守1人に対して罪人2人の割合」(同)であり、看守は「貴族が国への忠誠を示すため差し出した子息」(同)とされている。同ページには「子息」とあるが、子息は「息子」と同義語であり男に限定される言葉だ。だがパッタドルやカブルーの育ての親[註 陰気なミルシリル]は貴族の女であるので、正確には「子弟」(子供や弟。転じて,年若い人。年少者。出典:スーパー大辞林)と表現されるべきであろう。[9]
* 物語本編に登場するカナリア隊は看守はパッタドル、罪人はその他メンバーだ(ただしミスルンは立場が異なる)。[9]
『ダンジョン飯』の世界でも戦争(国家規模での軍事衝突)は起こっているだろうが、カナリア隊は戦争のための部隊ではない。迷宮内では、迷宮の主の思考や行動を読みながらの対応が求められることから、6名という先遣隊のメンバー構成は機動性と戦術性を最大限に発揮しうる人数であろう。そのメンバーも、迷宮は閉鎖空間であることから能力の相互補完を前提として構成されている
† 囚人は看守の許可がなければ魔術が使えないという強い制約が掛けられている点がカナリア隊の特徴だ。よって「看守が先に死ぬと囚人は術を使うことができず、自分の身を守れずにお後を追うハメになることも多い」(WG P73)とのこと。ミスルンはオッタとシスヒスの看守(WG P72)、パッタドルはフレキとリシオンの看守(WG P78)である。
カナリア隊のメンバーの容姿には露骨な特徴がある。エルフの特徴である尖った長い耳の一部が「欠けている」点だ。隊長ミスルンにいたっては、耳の先端側3分の1から半分ほどがない。パッタドルを除く他の4名も、耳にくさび状の切れ込みが入っている。これが「古代魔術に関わった犯罪者」の外見上特徴として受けた刑罰なのかもしれない。この推測が正しければ、この切れ込みがないパッタドルは、古代魔術関与の罪に問われていない隊員ということになる。
* 上記の検討のとおり「罪人には耳に切れ込みを入れられる」(9巻P137)とのこと。パッタドルは貴族の子弟、その他のメンバーは罪人である。[WG]後述するがミスルンは元は貴族の青年であり、耳の先端を失った事情と経緯は他のメンバーと異なる[9]。ミスルンは元迷宮の主であるが、現在も貴族の一員として看守の役割でカナリア隊に所属している。[10][WG]
† 囚人(罪人)たちが古代魔術に手を出す理由は人それぞれであるが、『ダンジョン飯』全体に通底するテーマである「欲」が明確に関係していることが描写されている。シスヒスは自身も北中央大陸出身であるが「貴族や裕福な者への強い妬みを抱いている」(WG P78)、フレキは「こんな世界は掃き溜めにしか感じない」(同P85コマ8)、リシオンは強い醜形恐怖症による獣人への憧れを持っており(同P84)、オッタは自身のジェンダーに悩みを持っていた。シスヒスには「オフリ」という苗字らしき説明があるが、家名とは異なるようだ。フレキ、オッタ、リシオンには家名がなく、犯罪者となった時点で一族から勘当されているものと思われる。南中央大陸と北中央大陸のエルフ国家は別々である。二国間関係は同盟関係にあるが(WG P132)、出身地に関係なくカナリア隊は〝北〟の国家側の組織の様子だ。
8巻 P133
|
8巻 P147
|
9巻 P137|陰気なミルシリル(右)、ヘルキ(左)
|
7巻 P77
先遣隊(筆者による仮称)は6名構成である。島主との交渉中にカブルーが入っていく場面(7巻 P67)で初登場する。ざっと隊長のミスルン(指揮・戦闘)、パッタドル(戦闘補助)、シスヒス(戦闘・戦闘補助)、オッタ(戦闘補助)、リシオン[9]氏名不詳(戦闘)、フレキ[9]氏名不詳(戦闘、探査)という役割分担がなされている。非戦闘にあたる交渉ではシスヒスとパッタドルを主として交渉を進めるようだ。描写は少ないが、交渉中に他のメンバーも皮肉、茶化し、言葉遊びなどを紛れ込みながら悠長に交渉を進めているようにも思える。長命種族ならではの「慌てなさ」である。(事態が危急を要する場面でも彼らは慌てないだろう)
6名の能力のバランスが冒険者(あるいは迷宮攻略パーティ)において重要であることを考えると、カナリア隊先遣部隊の編成は次のようだと考えられる。基本的に全員軽装(というか金属防具による防御的武装が皆無)なのは、このパーティが極端なまでに鋭利な突破力へと戦闘教義を特化させているからだと思われる。
* 余談だがカナリア隊の制服は胸元に厚手のキルティング生地がつかわれているためか、胸部が男性でも盛り上がって見え、かつ男性も上半身は細身であるため腰回りのくびれが強調されがちなど、男女の外見上の区別がつきにくい傾向がある。そのため筆者を含め、ミスルンを女性だと思っていた読者は多いようだ。
* エルフ男性が中性的な容姿を持つことはトールキン以来の伝統ではあるが、これには現生人類の中性化の先を描いたものなのかもしれない。闘争本能を刺激し、筋肉増強を促す役割で知られる男性ホルモン「テストステロン」が低下し続けることで人類の男性は協調性を強化し、狩猟にしても農耕にしても、食の獲得を有利にし、結果として生存率を高めてきた。現生人類(ホモサピエンス)は20万年前に登場したが、文化や道具の発明などの技術を持ち始めるのは直近5万年の間のことだ。これはテストステロンの減少と関連性があるとされる。その行き着いた先が現代人における生殖機能の劣化(これはエルフでも描かれる)や身体的性別の中性化(曖昧化とも言い換えられるだろう)である。
配置 | 名前 | 攻撃方法 | 射程距離 |
前衛 | ミスルン | 転移術による攻撃。転移術を用いた格闘は8巻P104〜P108、接近戦でのマントを用いた斬撃は11巻P151〜P152にて描かれる。 | 接触〜近距離 |
リシオン[9] | 獣人化による格闘。 | 接触 | |
フレキ[9] | 黒い鳥型の魔物(使い魔[9])による攻撃 | 近〜中距離の飛翔攻撃 | |
後衛 | オッタ | 土(または迷宮の構造)を操作する防御的な術に見えるが、使いようによっては攻撃も可能 | 近〜中距離 |
シスヒス | 近〜中距離 | ||
パッタドル | 水のような防御結界を張ってパーティを守る。攻撃手段としては不明だがウンディーネの攻撃と同じ攻撃手段が用意されているものと思われる | 近距離か |
XII 本作の舞台である島の迷宮でのカナリア隊の戦績をまとめると、以下のようになる。
巻 | 頁 | 対戦カード | 結果 | 詳細 |
8巻 | p103〜108 | ミスルン vs. 裏島主(島の裏を牛耳る頭目)の一味 | 勝利 | 短距離の転移術で石壁の中に飛ばしていき敵を制圧。 |
8巻 | p115〜123 | カナリア隊 vs. 巨大歩き茸の群体 | 勝利 | パッタドルが出口周辺に結界を張り、オッタの足場を使ってミスルンが巨大歩き茸Aを地下4階(水中)に転移させて制圧。 |
8巻 | p124〜139 | ミスルン vs. シスル | 勝利 | 巨大茸B・Cが出現し、ミスルンは狂乱の魔術師が付近にいると推測。柱上からシスルを確認。オッタに逃走路を塞がせてシスルを追い詰める。 |
8巻 | p140〜155 | ミスルン vs. キメラファリン | 作戦失敗 | シスル救出に現れたファリンに転移術による投石でミスルンが対峙する。カブルーがミスルンの攻撃を妨害し、シスルは一階の床を崩して下階層へ逃げる。 |
9巻 | p159〜170 | カナリア隊 vs.「港町近くの迷宮」 | 作戦失敗 | 註:ミスルンの回想であり〝島〟での戦闘ではない。 一隊員時代のミスルンやミルシリルを始めとするメンバーが参加する。ミスルンは迷宮の底で鏡を見つけて欲望を読まれ、ヤギの姿の悪魔に付け入れられる。 |
9巻 | p174〜178 | ミスルン vs. グリフォン | 勝利 | チェンジリングの煙でグリフォンを動揺させたのち、転移術のパンチで撃退。 |
10巻 | カナリア隊の戦闘なし | |||
11巻 | p116〜118 | ミスルン vs. イヅツミ | 戦闘中断 | シスルの家の2階に転移術で現れたミスルンにイヅツミが即応するが、転移術で屋外へ飛ばされる。p138でも部屋に飛び込んできたイヅツミの蹴りをミスルンは転移術で回避する。 |
11巻 | p122〜p127 | ミスルン vs. マルシル | 戦闘中断 | 〝本〟の在処を聞くマルシルが爆発の魔法で応じるが、即座に1階へ転移する。 |
11巻 | p139〜p171 | カナリア隊 vs. マルシル+翼獅子 | 全滅 | 〝本〟の奪取のためにミスルンはマルシルに迫る。翼獅子を呪文で解放したマルシルにミスルンは額縁の斬撃や切り取った角による刺突を試みる。無限そのものである悪魔は殺せないため、ミスルンとオッタで足止めする。ミスルンはマルシルに再び近接するが、「私が迷宮の主になるから 今すぐ私の願いを叶えなさい!!」(p163コマ1)の宣言で形勢逆転する。蜘蛛の魔物(アリアドネ種の大グモ=p213)でフレキ、パッタドル、オッタ、シスヒスは麻痺する。マルシルは脱出し、カナリア隊が敗北する。 |
11巻 | p196〜p200 | リシオン vs. ライオス、イヅツミ | 戦闘中断 | 獣人化したリシオンの攻撃を受けるが、カブルーの咄嗟の判断で回避。イヅツミの奇襲はリシオンに押さえつけられる。 |
12巻 | p145〜 | カナリア隊のミスルン隊 vs. マルシルの魔物軍 | 全滅 | 地上を目指して進むマルシルの軍団とミスルン隊が正面衝突する。リシオンが道を前衛として突破し、ミスルンがマルシルへ到達する最短距離を確保する。マルシルは翼獅子の地形変化の術で水中から塔を生み出してミスルンの突撃を避けたうえで、8〜12体のウンディーネによる集中砲火を食らわせる。決死のミスルンの転移攻撃は翼獅子に阻まれ、マルシルの魔法でミスルンは頭部を撃ち抜かれる。他のメンバーの戦線も崩壊し、リシオンのみがライオスに救出される。事実上の全滅を喫す。 |
8巻 P150
一見するとミスルン(隊長)とシスヒスがともに行動している場面が目立ち、パッタドルがうろたえている表現があちこちで見られることから、シスヒスが副隊長のような印象を最初は受けたが、隊としての指示系統はパッタドルが次席の地位にあるものと考えられる。これはカブルーがミスルンを押さえつけた際、シスヒスがパッタドルにアイコンタクトをしてから攻撃の予備動作に移っていることからそう判断できる。
* これにはパッタドルは「看守」であり、シスヒス、オッタ、フレキ、リシオンは「罪人」という立場の違いもあるだろう。パッタドルは部隊(本隊)の上陸を再三言い、ミスルンの転落後は暴走して本隊を上陸させるなど、指揮官としては短絡的な行動がやや目立つ。[9]
† 囚人が魔術を使うには看守の許可が必要である(WG P73)。この場面は〝パッタドルがシスヒスに魔術の使用を許可した描写〟であるとわかる。
7巻 P77
本名 ケレンシル家のミスルン†
階級 隊長・戦闘指揮、貴族出身、* (元)迷宮の主[9]
所属 エルフ(西方エルフ)、北中央大陸出身、185歳†
性別 男[9](筆者は途中まで女性キャラだと思っていたが、どうやら男なのではないかと8巻の途中で思うようになったので仮で男としておく。でも女かもしれない) * 9巻にて青年時代のエピソードが明らかになる。† 母の不義の子である
肌タイプ 白系肌
髪型 中分けウェーブ系ショートボブ
耳の状態 左右とも先端側がない
一人称 私
その他の特徴 右目は視力がない様子。† 右目は義眼である。 方向音痴(* 迷宮の主であったときの名残として人間の感覚での前進よりも抜け道を自然と見つける[9])。戦闘中に微笑するほどの武闘派。
カブルーによる推測 年齢「180歳くらい?」、身長「155cm前後」、瞳が「黒」(黒はエルフには珍しい。青年時代は銀色)、名前「ミスリル由来か?」、言葉に訛りがないことから「中央の出身」。(すべて9巻P137)
得意技 転移術。自分自身または触れるものを転移(空間交換)させる魔法。生物・非生物は問わない。物理空間的に区切れている物体同士を入れ替えさせる(何もない空間との交換は移転したように見える)。
8巻 P108 |
8巻 P135 |
10巻 P103, 6-7コマ目 |
視界の範囲であれば指定の場所を狙い撃ちできる(片目ゆえに命中精度はやや低い)など、この転移術は殺傷性の非常に高い攻撃手段でもある。視界外の空間との交換(転移)は無作為に近い状態で行われるため、どのような場所に飛ばされる(交換される)かは予想がつかない。描かれている術行使場面から判断するに「送る」空間は物体でなくてはならないが、「交換される」空間は何もない空間(空気)でもよいもよう。ファリン攻撃時に「脳を狙った」(P144、7コマ目、オッタのセリフ)とあるが、手元の「空気だけを送って、脳だけ抜き取る」ような攻撃をしていないことからそう判断した。空腹に弱いのか、カロリー消費が激しいのか、シスヒスに「ご飯食べさせないと」(P146、1コマ目)と言われる。「身体の接触面が多いと転移できない」(11巻P180, 7コマ目)という特徴がある。
* 欲求を感じない体 ミスルンは「悪魔への復讐欲(復讐心)」以外のすべての欲求を失っている。迷宮の主として悪魔に「欲」を吸い取られた果てに、「あらゆる欲求を〝感じない〟体になってしまった」(9巻P166)。喪失した欲求には睡眠や食事、排泄といった生理的欲求も含まれているが、「寝なくて済む・食べなくて済む・排泄も不要」なのではない。本来は体が発する警報である生理的欲求を感じられないため、生命維持にさえ困難のある体質となっているのである。魔力切れの場合も突然に気絶する。そのため、普段の世話はシスヒスを中心に行われている。眠りにおいても「薬か魔術がないと眠れない」(9巻P165、2コマ目)と言っている。ただしこのときはカブルーによる脚へのマッサージによって眠りに落ちている。[9]
9巻 P149, 1コマ |
9巻 P153, 7コマ目|カブルーは「体力あるな」と言っているが、これは誤解であることがのちにわかる |
9巻 P166, 5-6コマ目
* 青年時代と罪 ミスルンがカブルーに語った物語は非常に複雑かつ登場人物の多いものであった。ミスルンの過去について、9巻時点では「ミスルンが語り、カブルーが理解した範囲」が描かれるので確定的事実とは限らないかもしれないが、大筋事実であろう。[9]
* ミスルンは貴族階級出身である。「当時はまさに完璧な青年」(9巻P166)という表現はカブルーの脚色も入っているだろうが、実際そうであったのだろう。ミスルンは兄に代わってカナリア隊に入隊した。入隊当時は一隊員であった(9巻P162)40年前に任務で「港町近くの迷宮」へ入り、そこで「迷宮の主(あるじ)」(9巻P159)となり、そこで「食べ残され」(9巻160)た。9巻時点ではミスルンが迷宮の主であったエピソードは紹介されたものの、エルフ社会での「罪状・罪名」について具体的には明かされていない。または「罪人」として扱われていない可能性もある。[9] † ミスルンは迷宮の主とはなったが、古代魔術関与の罪人とはされていない模様。中央監視塔の事件後に救出されたのち、ウタヤ事件を経て陰気なミルシリルの奨めを受けて隊へ復帰後は、シスヒスとオッタの看守兼隊長として行動している。
9巻 P168
* ミスルンと魔法の鏡 ミスルンは「港町近くの迷宮の底」で「ひとつの鏡」を見つけた(9巻P169)。その鏡は「見た者の欲望を映し心を奪う魔法の鏡」(同)である。魔法の鏡に映った「自分の兄と想い人が食事をしている」光景はミスルンにとって「叶わなかった恋」(同)であり、彼は「ひどく動揺」(同)した。カブルーはこのエピソードを「うまい舵取り」「悲恋話は古今東西問わず万人受けする」(同)と言うが、マルシルの趣味のことを紐付けて考えると、エルフ全体にこうしたジェットコースター型ラブストーリーを愛好する性質や貴族的なドロドロの恋愛をゲームのように楽しむ傾向があるように思われる。9巻P186・4コマ目の背景に描かれている関係図のうち、ミスルンから兄への矢印には異常な情報量となっており、一方的に複雑化(complexity)した感情を抱いていたことがわかる。こうした傾向はマルシルだけのものではないといえるだろう。「迷宮の力すなわち悪魔は強い欲望を持つ者を招く」(9巻P187)、「とりわけ強い欲望を持つ者を主に選び望みを叶えさらなる欲望を引き出す」(同)。それはミスルンの想い人への恋慕は強かったことの証左であろう。「魔法の鏡」はグリム童話『白雪姫』以来、ときに人の欲望を満たし、ときに人に渇望を抱かせる呪力の高い小道具として扱われる。[9]
* ミスルンの欲望を食う悪魔 怒りの衝動で叩き割った鏡から一匹の仔ヤギが現れ、「入隊さえしなければ一緒になれるはずだった」「今からでもそんな未来を見たくないか」(9巻P170)とヤギはミスルンをそそのかした。「カナリア隊に入隊しなかった自分の人生を〝欲して〟しまった」(9巻P171)。ヤギはミスルンに欲したものを「なんでも」(9巻P172)与えた。ミスルンが欲したのは「故郷の風景」「仲間や愛する者との穏やかな暮らし」(9巻P180)、つまり幸せな生活だった。だが迷宮は冒険者を呼び寄せる。防衛を強化しようとすればするほど「迷宮内には魔物が跋扈」(9巻P181)することになり「構造も複雑」(同)になった。ヤギはミスルンの「願いを叶える」(同)ことで力を増していく。かつての想い人も下半身が大蛇の姿(これは9巻表紙絵にある俎板の突き刺さった蛇であろう)として描かれ、仔ヤギも成獣に変貌する。欲望を悪魔に吸収されたことでミスルンは気力を失い、ついには体を食われて「生存欲」も喪失した。[9]
* 最後に残った悪魔への復讐欲 ミスルンを救助したエルフ(カナリア隊メンバーの「陰気なミルシリル」と「ヘルキ」である。救助シーンは9巻P184-185、ミルシリルとヘルキは9巻P163に登場)は、ミスルンについて「悪魔への復讐心だけ食い残された」「彼はこれから悪魔を殺すためだけに 食べたくもない飯を食い 生きたくもない生を生きるだろう」と言われる。ミルシリルは、「(悪魔は)十分な力を蓄えるには(ミスルンでは)食い足りなかった」(9巻P185)ので、(ミスルンを食べた悪魔は)姿を消したと語る。ミスルンの右目と耳はこの時に悪魔に傷つけられ、左目も黒に変色したことが回想で描かれる。[9]
† 廃人状態からの復帰とリハビリ ミスルンを「完璧な青年」と考えたカブルーに対し、「違う」(WG P76コマ1)とミスルンは即座に否定する。「全ての人間を見下していた」(同コマ3)「全てが許せなかった」(同コマ6)のであり、悪魔はそうしたミスルンの「劣等感、嫉妬、嘘、怒り」(同P87コマ4)を見抜いて捕らえ、最終的に生存への欲求に加えて「目と耳を奪った」(WG P76コマ7)のである。兄との関係は「良好」(WG P77コマ12)で「5年に1回程度は会っている」(同P73)とのことだが、WG P74の「来歴」に基づくと、救出(479年)からウタヤ事件(499年)までは20年ある。来歴では救出後から「リハビリに励む」とあるが、陰気なミルシリルの発言によると「完治したのに未だ死体も同然」(WG P86)であるから、「ウタヤで悪魔を見た」のがウタヤ事件(499年)のタイミングと同じことを指しているのであれば、この間はほぼベッドから動いていないものと思われる。悪魔への復讐欲のみに突き動かされてからが、おそらくミスルンの本格的なリハビリであろう。翌年のカナリア隊隊長就任(500年)から島上陸(514年)までは15年あるから、単純計算で3〜4回程度会っている計算になる。会っているということは実家への帰還を意味していると考えられる。ケレンシル家には迷宮の主を自家から出してしまった汚名があると思われるが、ミスルンを追放しているわけではなく、引き続き貴族(看守)として任務に当てているようだ。実家を含め、広い人間関係の中でミスルンの過去の本心が知れ渡っていることは想像に難くないが、悪魔への復讐のみがミスルン唯一の生きる理由であり、もはや羞恥心や過去に囚われる心理も彼にはない。恥のような感情を含む心理的欲求も感じない身体になってしまったのだから。
* カブルーへの態度の軟化 ミスルンはカブルーとの同行の間で、カブルーへの態度を徐々に変化させている。カブルーは迷宮の制圧に使命感を持っており、その目的達成のためであれば手段を問わず、自分の選り好みを克服できる精神的強さを持っている。一方でその目的意識のための諸動作は「欲」にも直結する要素となる。だが迷宮攻略にはカブルーが必要と認識して心を許したのか、「お前は知りたがりだな その性質は迷宮では命取りとなるぞ」(9巻P158)とアドバイスし、カブルーからライオスの話を聞いて危険性を察知した以後ではカブルーに「どうしたい?」(9巻p200)「うん ではそうしよう」(9巻p202)と微笑を浮かべてカブルーの意思を支援している。[9]
9巻 P181, 1コマ目
* 黒-赤-黒-白の縞を持つ大蛇となった〝想い人〟 ミスルンが幸せな生活を欲した「想い人」は、ミスルンが主となった迷宮では下半身が大蛇となって現れる。本誌内の描写はモノクロであるが、表紙では「黒-赤-黒-白」の順番の縞模様を持つ様子が描かれている。この配色は実在する毒ヘビ「サンゴヘビ」や「プエブラミルクヘビ」などが該当する。蛇は鱗の枚数などで種類が異なるが、本作で描写されている「下半身の蛇」を具体的な種類と同定するのにはやや無理があるだろう。日本国内でもペットとして流通している。[9]
† シスヒスの幻覚術を跳ね除ける復讐心の強さ ウタヤ事件で壊滅的な被害を受けたカナリア隊に「自分がそこにいれば悪魔をどうにかできたはず」(WG P73)という思いで隊長として復帰したミスルンは、シスヒスの世話を受けることになる。シスヒスの幻覚術はミスルンを簡単に操作し、「言いなりすぎるのも楽しくない」(WG P82)とまで言われる。だが「事故にでも見せかけて あの女(註 パッタドル)を痛めつけてくださいな」(同)という幻覚に対しては「嫌だ そんなことをすれば隊にいられなくなる」とあっさり拒絶する。悪魔への復讐のみを欲求として生きているミスルンにとって、幻覚術を跳ね除けるほど強い。シスヒスにとってこれは意外なことだったらしく、結果的にシスヒスからの敬意も獲得する。
XI 「欲がない」ことの空虚さ 無欲や無私であることは一般的に美徳とされる。それほど現実の人間と社会は強弱大小の欲望にまみれているからだ。しかしそれらの全てを奪われ、喪失してしまったらどうなるだろう。迷宮の力を使って叶えた欲望は悪魔に食われ、最終的には生存のための基本的欲求まで食われて廃人化する。その状態をミスルンは「空虚」(11巻 p136, p6)だと表現し、マルシルに対して「確かに迷宮は人の欲望を叶える が同時に人はその欲望を失うことになる」(11巻 p136, コマ5)「それがどんなに空虚なことかお前にはわからないか」(11巻 p136, コマ6)と説く。
9巻 P163, 7コマ目 |
9巻 P163, 9コマ目 |
9巻 P184, 3-5コマ |
8巻 P146, 6コマ |
7巻 P74
本名 ヴァリ家のパッタドル†
階級 隊員・戦闘補助(副隊長かもしれない ミスルンのパートナー)、* 貴族[9]
種族 エルフ(西方エルフ)、北中央大陸出身、82歳†
性別 女
肌タイプ 白系肌
一人称 私
耳の状態 切り込み無し(正常)
その他の特徴 鼻が長い(高い)。気弱なのか、うろたえる描写がしばしばある。根は善人のようでもあるが、カナリア隊の使命感は強いようで任務においては積極的に見える。実際の戦闘においては容赦ない面もあるのだろう。服装はフルロングスカートでマントを常時着用。言外の表情から、シスヒスに対してライバル意識を持っているかもしれない(8巻P94の表情など)。† 負けん気の強い性格である。
得意技 水のような膜状の結界(物理)を作る。外側からは侵入できないが、内側からは出られる。XI 結界を作るには、フェアリー(連絡用妖精)を「ギュ」(8巻P117)と掴んで「ぼわぁ ⋯」と光の杖に変え(11巻P153)ながら詠唱を行う。この詠唱には一定時間が必要なようである(11巻P153)。
本名 シスヒス・オフリ†
階級 隊員・戦闘・戦闘補助、* 罪人[9]
罪状 † 古代魔術の使用及び殺人教唆、文書偽造、詐欺。終身刑
種族 エルフ(西方エルフ)、北中央大陸、149歳†
性別 女
肌タイプ 褐色系肌
髪型 腰まであるロング
耳の状態 くさび形の切り込み有り
一人称 私
11巻 P112, 5コマ目
その他の特徴 身長が高い。額に7条の放射状の文様がある。中央の1本は長く、他の6本は爪程度の長さ。下まつげが強調されて描かれている。他のエルフが着用している首まであるキルティング風のネックがなく、デコルテから胸元まで大きく開いた胸を強調する服装。首に黒系色のチョーカーを着用。西方エルフの描写でよくみられるロングスカート。口調は相応の立場の相手には慇懃だったり、目下には優しかったりするが、これらはすべて交渉やコミュニケーションのためであろう。本心は残酷で、隊内ではミスルン並みに冷酷無比な魔法使いと思われる。† 理由は未詳だが「貴族や裕福な生まれのものに対して強い妬みを抱いている」(WG P78)。
得意技 詳細不明、 すずらんのような形状の小さな魔法杖を使用する。† 杖は金色である。「鈴の音によって人の心を惑わせる幻覚術の使い手」(WG P78)。「(大茸を)燃やしたり」というセリフがあることから、火炎を操れるものと思われる。XI 11巻までの時点で攻撃魔法を行使する描写はないが、幻覚術はしばしば使われる。戦闘中での使用例は11巻p155にて走るマルシルに「あなたの両足は石になる」と幻覚術を掛ける。
8巻 P119(左右どちらも)
10巻 P105, 4コマ
階級 隊員・戦闘補助、* 罪人[9]
罪状 † 古代魔術品の売買及び使用、人身売買。懲役年は不詳
種族 エルフ(西方エルフ)
性別 ** 女[注]
注:10巻P105, 4コマ目にてカブルーから「彼女」と呼ばれていることから女性と思われる。容姿は小柄な男性のようでもある。(右図)
肌タイプ 白系肌。腕と足に線模様の刺青風の文様が特徴
一人称
耳の状態 くさび形の切り込み有り
髪型 ベリーショートの短髪
その他の特徴 耳にリング状のピアスを左耳に3個、右耳に2個のリングを装着(これは両耳に3個ずつの可能性がある)。腕の刺青の文様は腕輪のように描かれていることもある(7巻)が、作画ミスかもしれない。ざっくばらんな口調で話す。過去に何人もの若いハーフフットの女に手を出すが「人間として尊敬し恋におちた」(WG P85)と語る。
得意技 床に手をついて集中することで、任意の場所の迷宮の形を変えられる。8巻では床を柱状や壁状に伸ばしてミスルンの足場を作ったり、シスルの脱出の妨害などを行なったりした。迷宮の主が行使する「迷宮を作り変える能力」の亜種だろうか。迷宮の変形ではなく、土を操作する術の可能性もある。石畳の内側には土が詰まっている描写などが細かい。† 「迷宮に接触することで、床を隆起させたり壁を切り開いたりと、地形をある程度変えることが可能」(WG P80)とのことである。XI 11巻P154にて実際に攻撃で使用する場面が描かれる。「貫けッ」(11巻P154, 1コマ目)の一言と共に地面(床)を操作してする太い槍のようにして翼獅子を食い止めている。
8巻 P143|コマ内左
階級 隊員・戦闘員、* 罪人[9]
罪状 † 古代魔術品の所持利用及び売買、懲役240年
種族 エルフ(西方エルフ)、南中央大陸出身、130歳†
性別 † 女 * 男 [注] わかりにくいが女の可能性が高いように思う
注:「【Web限定&先行公開!】九井諒子ラクガキ本「Daydream Hour Extra」」の「04 カナリア隊の基本装備。」にて肌着1枚から制服着衣のプロセスが公開されている。さすがに女性キャラクターをトップレスで描かないだろうから男性だろう。 女性でした(WG P78)† 胸元にかかるキルティング風生地が厚手のためか、白地の上衣を着ると胸元が膨らんで見える構造のようだ(下画像)。
肌タイプ 白系肌
一人称
耳の状態 くさび形の切り込み有り
9巻 P174、5コマ目
10巻 P98、3-4コマ目
その他の特徴 ぼさぼさの長髪。鷹匠のような厚手の手袋を右手に装着している。この手袋は「買い物中」も装着しっぱなしである。ブーツはくるぶしまでの短いもの、上着の丈も短めで腿までの長さ。オッタ同様に口調はやや荒いが、カブルーに「ちゃんと食えてるのか?」(7巻 P75)と声をかけるなどの場面もある。ミスルンには畏怖を感じているもよう。(7巻 P75、ミスルンの「それで」の一言で緊張の面持ちで固まっているあたり)。カナリア隊の中ではツッコミ担当のような場面が多く描写されている。
8巻P143では耳の切れ込みが描かれていないが、他のコマでは必ず描かれているので作画ミスと思われる。素肌の胸元には翼を広げた鳥形の紋様、腹部には呪術的な紋様が描かれている。
† 麻薬購入のため(金銭目当て)古代魔術に手を出した麻薬中毒者である。「金が入るとすぐつぎ込む」(バイボルP83コマ4、リシオンのセリフ)、「幻覚作用のある茸を食べて使い魔を操作すると彼女曰く“本当”の世界が視えるらしい」(同コマ6)、「そこは何もも煌めいて鮮明で 泣きたくなるほど美しいとか」(同コマ7)。『カモメのジョナサン』のような世界である。「WG」では中毒者と解説されているが、依存薬物の中毒症状(禁断症状)についての描写がないので、常習者といったところか。
得意技 鳥型の黒い魔物(使い魔[9]。詳細不明)を召喚(または創造)して使役できる様子。8巻では実際の戦闘の描写はない。
* 9巻にて迷宮深部へ転落したミスルンを捜索するべく「転移の巻物」を持たせた使い魔を派遣する。
** 偵察活動においては、フレキ自身は1箇所にとどまって瞑想状態のまま、複数の鳥型の魔物を使い、視覚の共有化と思われる偵察を行える。10巻(P98、3〜5コマ)では3羽の白い鳥を使役して偵察を行っている。鳥による偵察はシスルも使用する鳥の魔物を使った視覚の共有による偵察と同じタイプの古代魔術だと思われる。偵察中は本体は身動きを取ることができない。これは視界がダブってしまい行動が困難になるからであろう。(7巻P152でマルシル召喚術で生成した魔物(肉体を与えている)を飛ばしてセンシを探した際に詳しい。マルシルは「自分の視界と重なって気持ち悪い」「こんなの何匹も飛ばしてどういう情報処理してんだろ?」(同、ただしこれはシスルに対しての言葉である)という。)
XI フレキが召喚する黒い鳥の姿はライオスによると「ワタリガラス」(11巻P98)である。本人の脳(意識)が接続されているかめか、この鳥が何らかの手段で破壊・殺傷されると本人は卒倒して意識不明の重体となり、「脳が損傷」(11巻P194, 8コマ目。リシオンによる説明)する。この場合、回復魔法は機能しないらしく、一旦絶命させてから蘇生することで生き返らせるのだという。しかも「よくあること」(同 10コマ目)らしい。
9巻 P197
8巻 P149|コマ内左
階級 隊員・戦闘員、* 罪人[9]
罪状 † 古代魔術による人体の改変及び殺人障害。終身刑
種族 エルフ(西方エルフ)、古代魔術で獣の魂と人を結合させた亜人(人工獣人)、南中央大陸出身、126歳†
性別 男
肌タイプ 白系肌。胸、脇、上腕、手首、腿、指に刺青状の文様が特徴
一人称 俺
耳の状態 くさび形の切り込み有り
髪型 本来のエルフの姿では、さらさら系ストレートの長髪(長さは尻まである)を2つに分けている。肩の少し上で筒状の装飾具を使って束ね、7巻では肩の後ろへ、8巻では肩の前へ垂らしている。
その他の特徴 タレ目、首巻きと腰巻だけを使い、上半身は裸。自らの容姿を醜いと感じていたことから人工獣人となる古代魔術に手を出す。† 自分の容姿に対して重度の醜形恐怖症を抱いており、「自分の身体をとにかく粗末に扱いまくって⋯⋯」(WG P84)と回想するが、求めていたものが獣人の姿であることを知り、古代魔術に手を出す。獣人の姿を「カッコいい身体」(同)と表現する。性根は優しい人物であるようだ。幻覚作用のあるキノコ(「大歩き茸」と思われる)によるトリップ中のフレキを介抱し、涎で窒息しないよう、身体の向きを変えてあげる姿がWG P83コマ5、6にて描写されている。
得意技 自らを犬系の獣の姿へと変化させる。8巻では実戦の描写はないが、「引き裂いたり」というセリフがあることから、肉弾戦/白兵格闘においては相当な戦闘力があるものと想像される。XI 実際の獣人化は11巻P197にて描写される。爪が伸び、腕は筋肉質となって濃い灰色の体毛が全身を覆う。頭部は犬型の魔物となる。狼男(Werewolf、表4側カバー)である。本人は「犬型の魔物の魂なのは確かだけど なんの魔物かは知らないな」(11巻P215、モンスターよもやま話内なのでメタ的場面である)と語る。
10巻 P97|
迷宮1階にてタンスやシュローパーティメンバーと衝突するカナリア隊メンバー。
** メンバーの氏名等は未詳。10巻P96〜P97では7名ほどが確認できる。「パッタドルが暴走して待機中の仲間を上陸させた」(10巻P197)とあるので、4月8日のことである(WG P127)。
XII 本隊メンバーは、後から上陸した副長フラメラに率いられている。一般隊員の他、「結界術師」などの特定スキル保持者によって構成されている。
12巻 P37 コマ1-2
階級 隊員・戦闘員、副長[XII]
種族 エルフ(西方エルフ)、おそらくは貴族の出身。
性別 女性の可能性が高い(12巻P25コマ1に、意図的に胸の谷間ラインが描かれているので。※他のコマでは見られない)
肌タイプ 漆黒系肌。エルフの女王と同じく漆黒の肌。連絡用妖精も同じ黒色肌。(女王の絵での初出は11巻P132。シルエットの人物のように描かれているが、実際に漆黒肌である)
一人称
耳の状態 標準の耳。ピアス穴のようにも見える白い点が耳朶に沿って4つある。
髪型
その他の特徴 初出は10巻P96。1階層の迷宮の入り口でタンスと言い争う場面に登場。シュローやリンと共に穴に転落する(p97)。カナリア隊の本隊メンバーの中では特に女王への忠誠が強い。歴戦なのか異常な勇猛さなのか、怖気付く他の若いメンバーに発破を掛けて働かせる。カブルーからはその通信内容を聞かれて「マッチョだなー」(12巻P143コマ7)と言われる。
得意技 複数の剣を空中に出現させて敵に投げつける技。原理は不明だが極めて実戦的な魔法といえる。
正式名称は8巻の時点では不明。* 9巻のカバーの裏表紙のイラストによると「Fairy」である。[9] † 正式名称は「連絡用妖精」であり、「ホムンクルスと呼ばれる人造人間」と説明されている(WG P74)。
頭に花輪をつけ、四枚の羽(昆虫のような翅)で飛翔する。背中側の外骨格が薄く伸びて整形されているものと考えられる。自律的意思がある場面では黒目があり、道化的な演技を色々している。
カナリア隊ではエルフたちの通信手段としてトランシーバーのように使われる。意思を剥奪されている際は白目で吹き出しが四角で描かれる。送信側は聞き耳を立てているような演技をし、受信側はスピーカーとして機能するようだ。† 連絡用妖精自体に戦闘力はない。
8巻 P163
|
9巻 P142
|
パッタドルは魔法を使う際に連絡用妖精を強く握り、引き伸ばすことで光る杖としている。物理的(物質による)杖ではない特徴的な杖である。8巻P117や11巻P153にこの描写が見られる。他のエルフも同様のことをするのかは未確認。
『ダンジョン飯』の方向性とテーマについての考察およびイヅツミちゃんの名前についての考察
ダンジョン飯の底に流れる「エディプス悲劇」と悲劇へのそのアンサー
九井諒子 『ダンジョン飯』 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉
・7巻 2019年4月12日発行, ISBN 978-4-04-735639-9
・8巻 2019年9月14日発行, ISBN 978-4-04-735626-9
・9巻 2020年5月15日発行, ISBN 978-4-04-736116-4
・10巻 2021年2月13日発行, ISBN 978-4-04-736274-1
・11巻 2021年9月15日発行, ISBN 978-4-04-736622-0
・ダンジョン飯 ワールドガイド 冒険者バイブル, 2021年2月13日, ISBN 978-4-04-736275-8
〈おわり〉