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『ダンジョン飯』考察|西方エルフの迷宮調査制圧部隊「カナリア隊」について

2019.9.22

© Ryoko Kui 2019

注意!【ネタバレ】有り

 『ダンジョン飯』8巻を読みました。7巻で初登場したエルフの迷宮調査制圧専門部隊カナリア隊の本格的なアクションが8巻では描かれたことで「武闘派エルフ」や「エルフ社会の暗部」が好みの筆者としては、またとない興奮エピソードでした。

 カナリア隊は『ダンジョン飯』の世界観において、かなり根幹に関わる組織であると思われますが、7-8巻の時点では未描写の部分が多い印象を受けます。カナリア隊について他の登場人物(および読者)に説明する語り手も実質的にカブルー1人であり、書き込みの多さなど画面内の情報量のわりには多大な不明情報を感じます。そこでカナリア隊について、7-8巻の情報をもとに筆者なりに整理してみることにしました。

※お断り:本ページの内容は2019年9月の8巻発売時までのものであり、今後のストーリー進行によって加筆修正する場合があります。

カナリア隊とは?

 「カナリア隊」は俗称である。正式な部隊名は7-8巻時点では不明。単に「部隊」などとも言われる。小鳥の船首像を持つ大型船で「島」に乗り付けてきた。カナリア隊の由来は、小鳥の船首像に加え、「炭鉱のカナリア」に由来するものと思われる。(ダンジョン飯の世界に「炭鉱のカナリア」があるかどうかはわからないが)

7巻 P63

カナリア隊の目的は?

 「迷宮の危険性が一定を超えた時やってくる 彼らの任務は迷宮の調査そして制圧」(7巻 P63、カブルーのセリフ)。前から島主に圧力をかけている噂があったが、強硬策に出たとカブルーはシュローに説明する。

 カブルーはウタヤ事件で「当時の副長が連れ帰って数年間育てられた」と述べていることから、カナリア隊について知識がある。また、このセリフから、現在の副長はカブルーが世話になったエルフとは別人物であることもわかる。

 部隊の総人数の詳細は不明。船内に一定数の本隊がいて、ミスルンら6名は交渉のための先遣隊と思われる。(7巻 P170のパッタドルのセリフ「今すぐ上陸命令を出しましょう!」などから推測)

カナリア隊のメンバーは?

 カナリア隊のメンバーについてカブルーは、「半数は古代魔術に関わった犯罪者で構成」「全員が迷宮攻略のためだけに技を磨く部隊」(8巻P133)と説明する。この点からも、カナリア隊自体が戦闘集団でありながら、特定任務に特化した「特殊工作部隊」とも言える。

 『ダンジョン飯』の世界でも戦争(軍事衝突)は起こっているだろうが、カナリア隊については迷宮という閉鎖空間、かつ迷宮の主の意思や行動を読んで対処する機敏性・戦術性、6名以内という人数構成で最大効率を発揮できる能力の相互補完が前提となっているようである。

 6名の能力のバランスが冒険者(あるいは迷宮攻略パーティ)において重要であることを考えると、カナリア隊先遣部隊の編成は次のようだと考えられる。基本的に全員軽装(というか金属防具による防御的武装が皆無)なのは、このパーティが極端なまでに鋭利な突破力へと戦闘教義を特化させているからだと思われる。

             
配置名前攻撃方法射程距離
前衛ミスルン転移術による攻撃接触〜近距離
氏名未詳獣人化による格闘接触
氏名未詳黒い鳥型の魔物(?)による攻撃近〜中距離の飛翔攻撃
後衛オッタ土(または迷宮の構造)を操作する防御的な術に見えるが、使いようによっては攻撃も可能近〜中距離
シスヒス火を使う魔法攻撃と予想される。防御手段としては不明近〜中距離
パッタドル水のような防御結界を張ってパーティを守る。攻撃手段としては不明近距離か

耳が欠けている理由は?

 カナリア隊のメンバーの容姿には露骨な特徴がある。エルフの特徴である尖った長い耳の一部が「欠けている」点だ。隊長ミスルンにいたっては、耳の先端側3分の1から半分ほどがない。パッタドルを除く他の4名も、耳にくさび状の切れ込みが入っている。これが「古代魔術に関わった犯罪者」の外見上特徴として受けた刑罰なのかもしれない。この推測が正しければ、この切れ込みがないパッタドルは、古代魔術関与の罪に問われていない隊員ということになる。

8巻 P133
8巻 P147

先遣隊のメンバーは?

 先遣隊(筆者による仮称)は6名構成である。島主との交渉中にカブルーが入っていく場面(7巻 P67)で初登場する。ざっと隊長のミスルン(指揮・戦闘)、パッタドル(戦闘補助)、シスヒス(戦闘・戦闘補助)、オッタ(戦闘補助)、氏名不詳(戦闘)、氏名不詳(戦闘)という役割分担がなされている。非戦闘にあたる交渉ではシスヒスとパッタドルを主として交渉を進めるようだ。描写は少ないが、交渉中に他のメンバーも皮肉、茶化し、言葉遊びなどを紛れ込みながら悠長に交渉を進めているようにも思える。長命種族ならではの「慌てなさ」である。(事態が危急を要する場面でも彼らは慌てないだろう)

8巻 P90

指示系統は?


8巻 P150

 一見するとミスルン(隊長)とシスヒスがともに行動している場面が目立ち、パッタドルがうろたえている表現があちこちで見られることから、シスヒスが副隊長のような印象を最初は受けたが、隊としての指示系統はパッタドルが次席の地位にあるものと考えられる。これはカブルーがミスルンを押さえつけた際、シスヒスがパッタドルにアイコンタクトをしてから攻撃の予備動作に移っていることからそう判断できる。

ミスルン


7巻 P77

階級 隊長・戦闘指揮

所属 エルフ(西方エルフ)

性別 男(筆者は途中まで女性キャラだと思っていたが、どうやら男なのではないかと8巻の途中で思うようになったので仮で男としておく。でも女かもしれない)

肌タイプ 白系肌

髪型 中分けウェーブ系ショートボブ

耳の状態 左右とも先端側がない

一人称 私

その他の特徴 右目は視力がない様子、方向音痴、戦闘中に微笑するほどの武闘派

得意技 転移術。自分自身または触れるものを転移(空間交換)させる魔法。生物・非生物は問わない。物理空間的に区切れている物体同士を入れ替えさせる(何もない空間との交換は移転したように見える)。

 視界の範囲であれば指定の場所を狙い撃ちできる(片目ゆえに命中精度はやや低い)など、この転移術は殺傷性の非常に高い攻撃手段でもある。視界外の空間との交換(転移)は無作為に近い状態で行われるため、どのような場所に飛ばされる(交換される)かは予想がつかない。描かれている術行使場面から判断するに「送る」空間は物体でなくてはならないが、「交換される」空間は何もない空間(空気)でもよいもよう。ファリン攻撃時に「脳を狙った」(P144、7コマ目、オッタのセリフ)とあるが、手元の「空気だけを送って、脳だけ抜き取る」ような攻撃をしていないことからそう判断した。空腹に弱いのか、カロリー消費が激しいのか、シスヒスに「ご飯食べさせないと」(P146、1コマ目)と言われる。


8巻 P108


8巻 P135

パッタドル


7巻 P74

階級 隊員・戦闘補助(副隊長かもしれない)

種族 エルフ(西方エルフ)

性別 女

肌タイプ 白系肌

一人称 私

耳の状態 切り込み無し(正常)

その他の特徴 鼻が長い(高い)。気弱なのか、うろたえる描写がしばしばある。根は善人のようでもあるが、カナリア隊の使命感は強いようで任務においては積極的に見える。実際の戦闘においては容赦ない面もあるのだろう。服装はフルロングスカートでマントを常時着用。言外の表情から、シスヒスに対してライバル意識を持っているかもしれない(8巻P94の表情など)。

得意技 水のような膜状の結界(物理)を作る。外側からは侵入できないが、内側からは出られる

シスヒス

8巻 P94

階級 隊員・戦闘・戦闘補助

種族 エルフ(西方エルフ)

性別 女

肌タイプ 褐色系肌

髪型 腰まであるロング

耳の状態 くさび形の切り込み有り

一人称 私

その他の特徴 身長が高い。額に7条の放射状の文様がある。中央の1本は長く、他の6本は爪程度の長さ。下まつげが強調されて描かれている。他のエルフが着用している首まであるキルティング風のネックがなく、デコルテから胸元まで大きく開いた胸を強調する服装。首に黒系色のチョーカーを着用。西方エルフの描写でよくみられるロングスカート。口調は相応の立場の相手には慇懃だったり、目下には優しかったりするが、これらはすべて交渉やコミュニケーションのためであろう。本心は残酷で、隊内ではミスルン並みに冷酷無比な魔法使いと思われる

得意技 詳細不明、すずらんのような形状の小さな魔法杖を使用する模様。「(大茸を)燃やしたり」というセリフがあることから、火炎を操れるものと思われる。

オッタ


8巻 P119(左右どちらも)

階級 隊員・戦闘補助

種族 エルフ(西方エルフ)

肌タイプ 白系肌。腕と足に線模様の刺青風の文様が特徴

一人称 

耳の状態 くさび形の切り込み有り

髪型 ベリーショートの短髪

その他の特徴 耳にリング状のピアスを左耳に3個、右耳に2個のリングを装着(これは両耳に3個ずつの可能性がある)。腕の刺青の文様は腕輪のように描かれていることもある(7巻)が、作画ミスかもしれない。ざっくばらんな口調で話す

得意技 床に手をついて集中することで、任意の場所の迷宮の形を変えられる。8巻では床を柱状や壁状に伸ばしてミスルンの足場を作ったり、シスルの脱出の妨害などを行なったりした。迷宮のあるじが行使する「迷宮を作り変える能力」の亜種だろうか。迷宮の変形ではなく、土を操作する術の可能性もある。石畳の内側には土が詰まっている描写などが細かい

氏名未詳


8巻 P143|コマ内左

階級 隊員・戦闘員

種族 エルフ(西方エルフ)

性別 わかりにくいが女の可能性が高いように思う

肌タイプ 白系肌

一人称 

耳の状態 くさび形の切り込み有り

その他の特徴 ぼさぼさの長髪。鷹匠のような厚手の手袋を右手に装着している。この手袋は「買い物中」も装着しっぱなしである。ブーツはくるぶしまでの短いもの、上着の丈も短めで腿までの長さ。オッタ同様に口調はやや荒いが、カブルーに「ちゃんと食えてるのか?」(7巻 P75)と声をかけるなどの場面もある。ミスルンには畏怖を感じているもよう。(7巻 P75、ミスルンの「それで」の一言で緊張の面持ちで固まっているあたり)

 8巻P143では耳の切れ込みが描かれていないが、他のコマでは必ず描かれているので作画ミスと思われる。

得意技 黒い鳥型の魔物(詳細不明)を召喚(または創造)して使役できる様子。8巻では実際の戦闘の描写はない

氏名未詳


8巻 P149|コマ内左

階級 隊員・戦闘員

種族 エルフ(西方エルフ)

肌タイプ 白系肌。胸、脇、上腕、手首、腿、指に刺青状の文様が特徴

一人称 俺

耳の状態 くさび形の切り込み有り

髪型 本来のエルフの姿では、さらさら系ストレートの長髪(長さは尻まである)を2つに分けている。肩の少し上で筒状の装飾具を使って束ね、7巻では肩の後ろへ、8巻では肩の前へ垂らしている。

その他の特徴 タレ目、首巻きと腰巻だけを使い、上半身は裸

得意技 自らを犬系の獣の姿へと変化させる。8巻では実戦の描写はないが、「引き裂いたり」というセリフがあることから、肉弾戦/白兵格闘においては相当な戦闘力があるものと想像される

フェアリー/ピクシー

 正式名称は8巻の時点では不明。頭に花輪をつけ、四枚の羽(昆虫のようなはね)で飛翔する。背中側の外骨格が薄く伸びて整形されているものと考えられる。自律的意思がある場面では黒目があり、道化的な演技を色々している。

 カナリア隊ではエルフたちの通信手段としてトランシーバーのように使われる。意思を剥奪されている際は白目で吹き出しが四角で描かれる。送信側は聞き耳を立てているような演技をし、受信側はスピーカーとして機能するようだ。

8巻 P163
8巻 P133

〈おわり〉